ヒトナツB-2
「今と昔は違うわ!」
「……」
顔を必死に隠す渚がおかしくて、少しからかってみることにした。
「……でもお前この間、俺の裸見たじゃん」
「あ……」
つい先日、俺たちは風呂で出くわしていた。
俺は、渚が湯船に使っていたから見えなかったが、渚は俺の体を見えていただろう。
「どうだったよ、俺のカラダは」
俺はわざとらしく言ってみる。
オマケでセクシーポーズも見せつけながら。
「……っ!バカ!あたしだって湯気で見えなかったもん!」
「……」
俺からは渚の姿(首から上だけだが)がはっきり見えたんだから、向こうからもはっきり見えてるはずだろう。
でもまあ、これ以上やるとあれだし、そういうことにしとくか。
するとタイミングよく、新たな話題が浮かんだ。
「そういえば、なんで着替えが脱衣所に無かったんだ?だからあんな事故が起きたんだぞ」
「あ…それは……」
なんだ?
すごい気になるぞ。
「その…下、着とか…見られたくないから……隠してた」
「ぷっ」
つい笑ってしまった。
顔を余計真っ赤にして、こいつ、なんて可愛らしい。
「だって!健吾があたしの下着見て狼になっちゃったらいけないじゃない!」
「ぶはっ!」
俺はその場に笑い転げる。
こいつをからかうとマジで面白い。
「じゃあ、もし俺が狼になったらどうする?若い男女がひとつ屋根の下で暮らしてんだぜ。ありえるかもよ」
「……」
すると渚は突然頭を下げて黙り込む。
やば、調子に乗り過ぎたか。
「……よ」
「ん?」
「健吾なら別にいいわよ」
「!」
泣きそうな顔で渚は言った。
ドクン
余りの不意打ちに心臓が跳ねる。
「はは……」
とりあえず誤魔化すと、渚は立ち上がった。
「じゃあ、また明日」
「あ?ああ、おやすみ」
渚はノロノロと部屋を出ていった。
なんだったんだ?
とりあえず、今夜は眠れない。
そう思った。