「ドMへの階段・・・」-57
「あ!美味しぃ!薄めたら美味しくなったよ!ねぇ。」
「あ?・・・あぁ。」
「ちょっと飲んでみてよ。」
そう言ってグラスを手渡され飲んでみる。
「・・・うぇっ・・。強ぇよオレには・・。」
以前その自家製の梅酒をオレも飲んでいたが、
グラスの底にちょっとだけ注ぎ、後は水で薄めて飲んでいた。
10分の1とも20分の1とも言える薄さである。
妻は大体3分の1位に薄めて飲んでいたが、この日は久々という事もあり、
5分の1まで薄めたらしい。それにしてもオレには到底飲む事は出来なかった。
「美味しいホント。もっと飲もっと。」
妻は飲み空かしては注ぎ、飲み空かしては注ぎを繰り返した。
回数を重ねる毎に、グラスに入っている梅酒の濃度が濃くなっているのが見た目で分かった。
薄い小便みたいな色をしていたのが今ではブランデーの様な金色になっている。
「お前、濃くしてんだろ。」
「・・え?・・うん。だって美味しいんだもん。」
しばらく飲まなかったら嫌いになっちゃった、という台詞をついさっき吐いたのが信じられない。
どれだけ濃くして飲んでいるのか気になって一口頂戴してみると、
一瞬にして顔から火が出る程に熱くなり、いつだかのドラッグを思い出した。
「濃すぎだろ?コレ・・。」
「・・濃くないよ。半分に割ってるんだよぉ?・・へへ。」
酔いが回ってるじゃねーか。
半分に割ったと言えどもあれだけ濃い梅酒を何杯も飲んでいるのだから不思議ではない。
だが妻はオレと違っていくら飲んでもそれほど赤くならないから一目見ただけでは酔っているのかどうかが分からない。