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てくてく
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てくてく-1

清水初菜は丘に通じる切り拓かれた道を歩いていた。

「ハァ、ハァ…」

すでに歩き始めて30分の時間が過ぎていた。
10月の穏やかな陽射しとはいえ、歩きづめのためか、初菜の額には汗が滲んでいる。

(もう……最悪…)

なだらかに続き先の見えない坂道を登りながら、初菜は先ほど行った出来事を恨めしく思わずにいられない。

それは彼女が歩く原因となったのだ。




「さて」

授業終了のチャイムと共に、初菜はカバンに教科書やノートを詰め込み、帰り支度を始める。

中間試験。

「ハツ帰るの?」

隣席の友人から声が掛かる。初菜は友人から〈ハツ〉と呼ばれていた。

彼女は少し焦った口調で、

「電車の時間が無いからさ」

それだけ言うと、カバンを持って教室を飛び出した。

学校から駅までが走って10分あまり。電車の発車時間まであと15分。何とか間に合う。

初菜は廊下を急ぎ足で抜けると、下足箱までの階段を駆け降りた。
その時だ。
背中に彼女を呼び止める声が響いた。振り向くと、そこには生徒指導の先生が立っていた。

(ヤバッ!)

生徒の間では、〈感情的で説教が長い〉と評判の女性教師。
彼女は眉にシワを寄せた神経質そうな表情で初菜に近づくと、

「アナタ!校内は走るなと校則で決まってるでしょう」

「はぁ…すいません」

表情と同様にカン高い声で注意する。初菜は〈早く終わって〉と、念じながら俯いて事が過ぎるのを待った。
しかし、女性教師はその態度が勘に触ったのか、さらにヒステリックに、

「アナタのように自分さえ良ければという人がいるから校則が守られ無いのよ!」

その時、下足箱にワラワラと他の生徒達が現れた。
彼等は一様に初菜と女性教師を見て状況を把握すると、〈さわらぬ神に…〉よろしく、そそくさと帰って行く。
それは初菜の友人も同様で、彼女がすがるような眼で見つめても視線を合わさず下足箱を後にする。

(何で私だけ…)

初菜はこの状況に苛立ちを覚え始めた。

(そもそも、ちょっと走った位で、何で私の人格的な事まで言われなきゃいけないの!そんな厳粛な高校か?ここは)

思いは呼び水となり、苛立ちは増幅していく。


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