キャンディーガール-1
「な・・・・なんだありぁ・・・」
駅の構内でそう呟いたのは、俺―黒崎 悟。17歳。改札口を通る女の子。工藤 典子に、思わず呟いていた。
「黒崎さぁ〜ん♪」
彼女は手を振る。
明らかに目立った服装で。
別世界のオーラを身にまとい、小走りで駆け寄る。
「お待たせしましたぁ☆」
息を切らせて立ち止まる彼女。
間近で見ると、更に仰天。
頭部を飾る、巨大なピンクのリボンにはレース。
白の長袖ブラウスの襟、胸元、袖口にもレース。
同じくピンクのスカートにも、ヒラヒラはぎっしり。
白のタイツに白の靴。
ここにはなかったが、バッグにはうじゃうじゃヒラヒラはいた。
俺は鯉のように口をパクパクさせた。
そしてバカ面で、バカな質問。
「本当に・・・・・典子ちゃん?」
「はいぃ♪」
首を傾げて笑う姿は、あの日の彼女に、間違いなかった。
あの日・・・それは三日前だ。
朝の通学途中。
俺は駅で声を掛けられた。
振り向く先にいたのは、緊張した面持ちの彼女。
まさかまさかと期待していたら、思った通り告白。
「好きです」
「付き合ってください」
初めてではなかったものの、すごく嬉しかった。
かわいいし、スタイルも雰囲気も俺好み。おまけに有名な女子高の制服。
当然、飛びつきたい!・・・・・とはいえ、鼻の下を伸ばして即OKなんて、していいものだろうか。軽い男と思われやしないだろうか。
心配になったが、迷いは一瞬で消えた。
彼女の不安そうな表情が、迷いを断ち切ったのだ。
俺は言った。
「君のことは知らないけど・・・俺でよかったら付き合ってもいいよ」
普通の。平々凡々な顔に、
「えっと、名前・・・」
「工藤 典子です!」
「典子ちゃんか・・・・じゃあ、これからヨロシク」
精一杯の爽やかな笑顔をのせて言うと。
「はいぃ!よろしくお願いします☆」
あの仕草で、彼女は微笑んでいた。
そして今。
俺の目は点になる。
フリフリふわふわ、甘々ロリータの彼女に、唖然、呆然。声も出ない。
彼女は聞く。
「この服、変ですかぁ?」
(ヘンだ)
「一生懸命、選んだんですけどぉ」
(そんな服を選ぶな)
「ダメですかぁ?」
(駄目だろ)
などなど突っ込みを入れるも、口に出来るはずもなく。
俺はまたしても、精一杯の笑顔。
「大丈夫。かわいいよ」
だけど引きつる。
目が泳ぐ。
気付いてないのか、彼女は喜んだ。