キャンディーガール-3
「もしもし」
『どうだ。うまくやってるか?』
敦志は告白の現場を見ている。
彼女の顔も、今日会ってることも知っている。
「どうもこうもないんだよ」
『なんかあったのか?』
「話は後で・・・なぁ、今からお前の家行っていいか?」
『何言ってんだよ。デート中だろ。それに俺だってデートしてんの』
「頼むよ!俺を助けると思ってさ」
『まあいいけど、彼女はどう』
「ありがと!恩に着るよ!じゃあ」
『お、おい悟!』
プツ。
俺は最後まで聞かず、電話切った。
彼女に事情(ウソの急用)を話し、レジで会計を済ませ、喫茶店を後にする。
敦志家では彼女に負けず劣らず、熱く、長く、語った俺。
「最悪だ・・・あんなかわいい子がロリータだったなんて」
「まあ人それぞれ趣味があるからな」
「趣味でもあれはないだろ。あれは!」
「俺見てねーし」
「見れば分かるって・・・・あぁ〜。まだ頭に飛んでるよ」
「何が」
「蝶だよ」
「蝶?」
「ああ・・・・・お花畑と蝶々」
服のせいだろうか。
彼女の周りにはお花畑が広がっていた。
そしてその花に誘われて飛んでいた蝶が、未だに俺の頭から離れない。
ふわふわと舞いながら、目の前を通り過ぎる。
蝶が飛んで行った先には、ゆらゆら風に揺れるたくさんの花。
ふりふりの服を着た彼女が笑顔で手を振り、スローモーションのように走ってくるのが見える――・・・。
「うゎ・・・また幻覚のフラッシュバックが・・」
頭を抱え、机に突っ伏した。
目をつぶっても焼きついている、メルヘンチックな世界。
もう無理な気がした。
彼女に会うたび、幻覚に悩まされるなんて、考えただけでも頭が痛い。
付き合っていく自信がなくなった。
(別れよう・・・)
決めたはずだったが、
「別れるのか?」
いざ敦志に聞かれると、
「うっ・・・ん――」
やっぱりダメだ。
もったいない。
そんな気がして、濁してしまった。
優柔不断な態度に、敦志の呆れた声が飛んでくる。
「だったらお前が、彼女の服を変えてやれば?」
簡単に言ってくれる。
でも敦志はサラリと口にした。
「簡単だろ?」
俺は幻想を無理矢理蹴散らし、飛び起きた。
「カンタン!?」
「ああ」
自信に満ちた表情が、悔しいくらい男前だった。
「で、どうやるんだ?」
頼りになる親友に、俺の目が輝く。
星のようにキラキラとさせ、漏らすことなく聞いていた。