花ときみ-6
「千枝理…」
「千枝理…?」
彼女はゆっくりと消えていく。
消えはじめる彼女に彼はなにもすることが出来なかった。
握る千枝理の手の感触は無くなっていく。
彼女は、彼の目の前から姿を消した。
あたりは祐樹が作ったティッシュペーパーの花が残った。
「今年も、桜が散ったなぁ」
バイト中、花屋の店長は、祐樹につぶやく。
「そうっすね」
「今年は特にあの桜きれいだったなあ」
「お客さんも褒めてましたね」
「あまりのきれいさに、他の花が嫉妬しないか心配だったよ。」
そのあと、店長は付け加えた。
「たぶん、桜までお前さんに惚れてたんだろうなぁ」