花ときみ-5
「…………わぁ」
「ごめんな、こんな花で」
「ううん、すごく嬉しい。私、すごく幸せ。人間になれて、祐樹に出会えてよかった」
「祐樹を、好きになれてよかった」
「千枝理、な。」
「なぁに?」
この言葉は、彼の中でいつまでも言えなかった。
言っても否定されることは、分かってたのに。
言わずにいられなかった。止めることが出来なかった。
「いなくならないで」
「ありがとう、
ごめんね」
祐樹の目からはいつのまにか涙が溢れていた。
「好きだよ」
「うん、あたしも。」
「祐樹を好きという感情しか知らない」
ティッシュペーパーで作った花は増え続ける。
「また、来年の春、きれいな花を咲かせるね」
「うん」
「私のこと忘れないでね」
「うん」
「でも、可愛い彼女を作って幸せになってね」
「分かった」
「あとはーーー…」
「まだ言い残したことあるのかよ」
「あるよ」
「何回、好きって言っても足りないね」
「そうだな」
彼女の、仕草、言葉、一つ一つが彼に気持ちを伝えるものだった。
祐樹に気持ちを伝えるために、彼女はここにいたのだった。
彼女が存在した理由はたったそれだけだった。
自分に会いたいために人間になったという少女は、ゆっくりと眠りにつく。
決して目覚めることのない深い眠りへ。