哀楽怒喜-2
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『楽』〜輪の中へ〜
ああ、この光景はなんと美しいんだろう。
休日の昼下がりの公園のベンチに、私は一人で腰掛けていた。
遠くでは、野球をしている少年達が。
日陰付きのイスとテーブルで、何やら話をしている二人の青年が。
すべり台では母と手を繋ぎながら遊んでいる子供が。
そしてそれを見守る父が。
私の褪せた感情を再び彩ってくれる。
決して大きくはない、この公園だが、この場所はいつでも私に何かを思い出させてくれた。
しかし、それを他の誰かに語る事はできない。
この感情は私だからこそ、感じる事ができるのだ。
朝日は眩しいがその中で動く人は美しい。
夜は暗いがその中を照らす人は美しい。
ある人が私に言った、「辛くはないか?」と。
無論辛かったさ。
私は私さえ無くしていたのだから。
だがそれさえ忘れてしまう程、今の私にはここが愛おしい。
風は心地よい、光も暖かい。
ようやく気付いた。いや、ずっと気付いていたのかもしれない。
私は世界も人間も好きで好きで仕方なかった。
それ故に、私はあらゆる物を捨て、私を失ったのだ。
もう戻る事はできないのだろうか。
あの醜くも、愛おしく、美しい日常に…。
「できますよ」
背後からの声に私は振り返った。
そこには天使が立っていた。
「もう一度聞きます、辛くはないですか?」
「辛いさ、だがこれは以前あなたが来た時の物とは、違う類の辛さだ」
「そうでしょう、あなたが気付くのを私はずっと待っていました」
「私は…戻れるのか?」
「できます、しかし、今の感情は捨て去らなければなりません」
「やはり…そうなのか…」