冷たい情愛6 俯いた横顔-1
12:30…
今日もお昼を食べにいく時間はない。
片山と午前、あんな事をしてしまっていたのでまったく仕事が終わらない。
午後は遠藤さんとの打ち合わせだ。
彼と相談することになっていた内容の整理が全くついていない。
私はエクセルと格闘しながら、一心不乱にパソコンのキーを叩く。
若い女の子が、ランチを食べにいったついでに私に軽食を買ってきてくれた。
デスクに座りながら、片手ですばやく口に放り込む。
「色気ねえなあ…」
声のする方を見ると…片山が立っていた。
「仕事中に色気は必要なんでしょうか」冷たく答える私。
「今日はからむなあ、おい」苦笑いをする上司。
「これが終わらないのも元はといえば片山さんが…」
大きな声で言いかけた私。
ここで私が午前の出来事をばらしたら、片山はどんな顔をするのだろう…。
ちょっといたずらしたい気分にもなったが、洒落にもならないので本当にはしない。
「午後の打ち合わせな…俺も同席するから」
・・・・・・・・
遠藤さんとのミーティング用にとった部屋は…
皮肉にも先ほどまで、片山と私が交わった部屋だった。
私は書類を再確認し、進め方をシュミレーションする。
(片山さん…なんで同席するのよ…)
意味もなく私は不安になる。
ドアの開く音。
遠藤さんが案内の者の後について、部屋に入ってきた。
いつもなら私だけなのだが、今日は片山がいる。
しかし、相変わらず彼は顔色一つ変えないで挨拶をする。
「お世話になっております。本日もよろしくお願い致します」
一寸の隙も見せず、彼は言う。
仕事の話はスムーズに進む。
常日頃、私は上司の片山に報告しているので、片山も適切な場面で適切な言葉を挟む。
しかし…あれだけ急いだ書類…一点だけミスがあった。