ICHIZU…Last-2
「じゃあ、後、お願いね!」
「うん!いってらっしゃい」
母親を送り出した修は、玄関をロックするとリビングに戻った。
そこにはヒザを抱えてテレビを見つめる佳代の姿があった。
「姉ちゃん、何かあったのか?」
小学生とはいえ、姉の不自然な行動が気がかりなのだ。
「別に…どうもしないよ」
「じゃあ何で部活に行かないんだ?姉ちゃん〈1週間は練習休みだから〉って言ってたけど、オレ、昨日、直也さんに逢ったんだ!
一昨日から練習やってるって言ってたよ」
「それは……」
佳代は一瞬、うろたえた顔を見せたが、すぐに力無く笑うと、
「私さ、野球辞めるんだ…」
姉の言葉に、今後は修がうろたえた。
ただ、弟とってはインパクトが強すぎた。彼は佳代の横にへたり込むと、唇を震わせて詰め寄った。
「ね、姉ちゃんの…せいで負けたのは知ってるよ」
佳代は修の言葉に反応せず、テレビを見ていた。
構わず修が、胸の内を明かす。
「…でも…でも…オレ、楽しみにしてたんだ…来年、野球部に入るの。姉ちゃんとまた野球が出来るって…」
佳代は修の顔を見ずに言葉に答える。
「私なんか居なくてもアンタは大丈夫。しっかりしてるから」
「姉ちゃ…」
「もう言うなぁぁーーっ!!」
目を剥いてヒステリックに佳代は叫んだ。
そして、ひと呼吸してから先ほどまでの力無い笑顔に戻る。
「もう、いいの……」
そして、またヒザを抱えると、テレビに視線を移した。