きみのとなりへI-1
きみと過ごした時間が夢だったような気がするよ…
『きみのとなりへ』
〜沙癒side〜
一平くん達のテレビ出演が終わった。
なんと、彼らは優勝してしまった!
デビューが決まり、今までのように、ストリートライブをする間もなくなってしまうようで、先日、最後のストリートライブがあった。
もう今までのように間近で歌を聴くことができなくなる。
泣きじゃくるファンに、「みんなありがとう!元気でね!」と、二人はキラキラした笑顔で言った。
そして二人は遠くへ行った。
なんだか…あの海での思い出が、まるで夢だったかのように、彼らは遠い存在になってしまった。
「沙癒、昨日の『○△TV』見た?」
教室に着いて、空いてる席を探していると、薫ちゃんが後ろから声を掛けてきた。
「え?」
「見とらんと〜?一平くん達出とったよ!」
「そ、そうなん!すごいね!」
「だよね!」
「…」
「………………………でも…ちょっと寂しいね…。」
薫ちゃんは席につきながら、ボソッと呟いた。
私も同感だった。
彼らとの日々はあっという間に過ぎ去って。
そして、テレビで見かける日が増えた。
それは世間に認められたって事。
とってもすごい事。
だけど…
始まったばかりの恋心の行き場に困る。
思いを伝えたくても伝えられないくらい。
一平くんは遠い存在になってしまった。
でも、たまに一平くんからメールが来る。
あんなに有名になったのに、いつもと変わりない調子で、誠二くんの様子や、テレビ局であった面白かった事なんかを、ちょくちょく報告してくれる。
それは本当に嬉しくて。
だけど…
余計に逢いたい気持ちが膨れ上がってしまう。
でも、逢いたいなんて、私には言う権利はない。
彼女でもなんでもないから。