投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

是奈でゲンキッ!
【コメディ その他小説】

是奈でゲンキッ!の最初へ 是奈でゲンキッ! 68 是奈でゲンキッ! 70 是奈でゲンキッ!の最後へ

特別興行 がんばれ田原くん! 『是奈と愉快な中間たち 2』 後編-8

「しょっ少年です! 少年のようです! どうやら一般参加の高校生のようですが…… 風圧で飛ばされたのでしょうか、ゼッケンが解りません! いったい誰なのでしょうか? ……おっと! どうやら少年は女の子を背負っているもようです。いったい何があったのでしょうか? それにしても早い! 早すぎると言ってもいいでしょう! 謎の少年が女の子を背負っての猛走です! もはや人間業とは思えません!!」
どうやら謎のランナーと言うのは嘉幸のようである。
 嘉幸は是奈に飲まされた『細胞強化活性剤』とか言う強力ドーピング剤と、都子に飲まされた七味唐辛子のせいでもって、常人の何十倍ものパワーが出てしまったようである。
「おーら、おらおらおらおらおらー! どけどけどけーーー!!」
嘉幸はまるでバーサーカーのごとく、おたけびとともに、『あっ』と言う間にトップグループに追いつくと、『いっ』と言う間も無く、オリンピック選手の三人をぶち抜いていた。
オリンピック選手達も、一瞬何が起きたのかと驚き。遠ざかって行く女の子のおんぶ姿に、唖然としていた。
一方、嘉幸の勢いは止まらない。
「おらおらおらおらー! 何人(なんぴと)たりとも、俺の前は走らせねーーー!」
 などと叫びながら、さらにピッチを上げて行く。
 そんな中、都子はそんな嘉幸の背中に負ぶさって、いったい何処で手に入れたのやら『がんばれ日本! 藤見晴市健康マラソン大会』と書かれたうちわを両手に持ち、
「ダンジリやー! ダンジリ、ダンジリー!!」
 とかなんとか叫びながら、うちわをバタバタと振り、大はしゃぎであった。


「さあ間もなくゴール地点です! ゴールテープが用意されています!」
残り300メートル、マラソン大会のゴールは眼と鼻の先で有る。
 嘉幸の鼻息も荒く、都子の手綱を引く手にも汗がにじむ。……おっと手綱は無いか。
「さあー謎の少年、女の子を背負ったまま、今!! ……ゴーーーーーーーール!!」
嘉幸、都子、共に両腕を高らかと掲げてゴールイン! 
 そして巻き起こる大歓声の嵐! 
 そしてゴールした嘉幸に駆け寄る、オフィシャル・スタッフ達!
 ……だが。
「おっとー! これはどうした事だーー!!」
突然集まったスタッフや、観客達がなぎ倒されて吹っ飛んだ。
どうやら嘉幸、ゴールで止まれなかったらしい。走って来た勢いのまま、オフィシャル・スタッフ達十数人と、審判団の控えるテント一つをなぎ倒すと、そのまま藤見晴市総合病院の方向へと、走り去って行ったのだった。


 ******


「も、もう駄目だ〜、限界だ〜」
「田原くん、がんばって! もうすぐ、もうすぐ真のゴールだから!」
 嘉幸の驚異的なドーピングパワーも切れてきたようである。息をゼーゼーさせながら、走るスピードも極端に遅くなり、ふらふらと、まるで酔っ払いの千鳥足のごとく、足元もおぼつかなくなって来ていた。
 それでも向かう、藤見晴市総合病院はもう目の前である。
「あとすこし、あとすこしでこの地獄から開放されるんだ! ……ゴー・トゥー・ヘブーン!」
 嘉幸はよろけながらも、病院の正面玄関前へとさしかかる。
 そして入り口の自動ドアがスッと開くと…… しまった嘉幸、入り口の玄関マットに脚を引っかけてしまった!
「うわぁーー!」
 嘉幸、前のめりになって、受付前のフロアーに顔面からヘッドスライディング! 3メートルほど滑って、エントランスにある、外来者待合用の長椅子の脚に頭をゴチン! ようやくその動きを止めていた。
 都子は嘉幸がつんのめって倒れる瞬間、「とうっ!」とか言って、嘉幸の背中から飛び降りると。クルクルっと2回転して、受付けカウンターの上に ”スタッ”っと(ちょっとひざが曲がったか)着地した。そして両腕を上げて華麗にポーズを決め。


是奈でゲンキッ!の最初へ 是奈でゲンキッ! 68 是奈でゲンキッ! 70 是奈でゲンキッ!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前