好きの言葉-1
『好き』
うん、知ってる。
『おまえは好きなの?』
なんでわかんないかな。
不安げな顔の彼におもいっきりの笑顔を見せた。
『好きよ、大好き』
たまに、思う。
好きって言葉にしなきゃダメなんだろうか。
『おまえはほんとに口に出さないからな。これだけは』
たった3ヶ月の恋をした彼が目の前にいる。
あたしは黙って彼の話を聞いた。
彼は笑いながらタバコの灰を落とす。
『そういえば、あたしあんたに好きだって言った事あったっけ』
あたしもタバコに手を伸ばす。
『ないんじゃね?聞いた事ない。ひどい女だな』
なんでだろう。
好きって言葉にしなくてもわかると思うけど。
『言葉にしないとわからないような男だったんだよ。あんたは』
彼は苦笑いをして、帰るか。と言い席を立った。
『そういえば、今の彼氏は好きとか言ってくんの?』
原付きに跨がりながら彼が言った。
『うん、あんたほどじゃないけど』
ヘルメットを被って、笑いながら彼は去っていった。
あたしと今の彼は付き合って半年。
あたしは、彼の事が好きだった。
好きよりも愛していた。
このまま、この人と一緒にいたいと思っていた。
でも、あたしは変わらず好きなんて言葉にした事がなかった。
気恥ずかしいのもあったのかもしれない。
『久しぶりだね』
たった5日会えなくても彼が愛しい。
『おかえり』
笑ってあたしを抱きしめてくれる。
ほんとに…大好き。
でも変に違和感があった。
それがなにかはわからない。
気付くのが遅すぎた。