冷たい情愛5-4
「迂闊でした。申し訳ありません。」
「お前が男に変な気を持って、公私混同するタイプじゃないのは俺が一番分かっている。
しかし、他の者にでも知られてみろ…」
片山の言うことは、全て正しかった。
仕事上では、事実の有無は元より、事実が有ると誤解されるようなこと自体が問題なのだ。
「それにだな…設楽…」
片山は、私のすぐ前に立ち言った。
「俺は…だなあ…その…つまり…お前が他の男と夜を過ごすなんぞ、許さんからな」
片山は、拗ねたように言った。
その可愛さに、私は笑ってしまった。
あの時…一度だけの夜もそうだった。
この男は、たまに、可愛い男になる。
言い古された言葉を使えば「少年のよう」といった感じだ。
「なんだよ、笑うなよっ!」
片山はむきになった。
そしてキスしてきたのだ。
私は片山と突き飛ばそうと力いっぱい押した。
しかし、大きい片山はびくともしない。
「片山さんこそ、職場で公私混同じゃないですか」
と言ってはみたものの、相手が片山だけに…なぜか私も笑いながら言ってしまった。
「なんだと!?お前、人にこれだけ心配させておいてだなあ…」
片山は、私を睨んだ後…
「そういう悪い子には、お仕置きが必要だな、うん」
私は大笑いしてしまった。
「なんですか、そのベタな発言は〜」
この男の前だと、私は脱力してしまう。
女だからと負けたくない一心で、男の倍仕事をしている私。
でも…片山の前では、そんな肩の力は抜けてしまう。
それは、片山がきっと…
同じ職場の人間を判断する時、性別より「仕事への情熱」を真っ先に見ているからだ。
片山は、私のすぐ前に立った。
そして…スカートの中に手を入れてきた。
ストッキング越しに、私の臀部を手のひらで触る。
「ちょっとっ!セクハラですよっ」
これまた私も、ベタな事を言ってしまう。
「お前が嫌がらなきゃ、セクハラにならないだろ?」
(なんて滅茶苦茶な…)私は心の中で白旗を上げた。
「はいはい、どうぞお好きに」
失笑しながら言った私。
その言葉に、普通の男なら「嫌味か!?」と怒りそうなものだが…
私の目の前の男は、そんな男ではない…。