冷たい情愛5-3
「今から設楽と大事な話をするから…ああ…そうだ…何か電話がきたら…そうだ…588に回してくれ」
電話を切ると、片山は冷静な顔で言った。
「さっきは怒鳴ってすまなかった…」
「いえ、大丈夫です。どうしましたか?」
片山の目は泳いでいた。
それだけ、言いにくいことなのだろうか。
「お前、昨日の夜…どこにいた…」
私は全身凍りついた。しかし…冷静を装わなければ…いけなかった。
「自宅には帰らず、都内に宿泊していました」
嘘は付けなかった…だから、ホテルに泊まったとは言わなかった。
「どこにだ?」
「そんなプライベートな事に、お答えしなければいけませんか?」
私は静かに言った。
「プライベートと仕事を混同しているのはお前だろう」
片山は、上司の顔でそう言った。
「昨日、緊急の電話が入ったんだぞ…データ確認しようにもお前のID
は変わってて開けないし…急いで追いかけたんだ…」
そこまで聞き…あとの展開は察しがついた。
片山は私を追いかけ、ビルの外まで来た…私の姿を見つけ、声をかけようとしていた…
しかし、私は…遠藤さんとすでに出会っていたのだろう。
「片山さん、見てたんですね…」
私は証拠を見つけられた容疑者のような気分になった。
「契約書も確定していない時点で、相手とプライベートで接点を持つということが
お前にはどういうことか、分かってるだろう」
片山の言うことは当然だった。