年上の事情。‐6-1
朝から仕込んだ、ビーフストロガノフに、サラダ。
香ちゃんが買ってきてくれた、あたしたちお気に入りのパン屋さんのフランスパン。
そして、後輩3人が買ってきてくれたワイン。
休日。
約束どおり、あたしは皆をウチに招待した。
なんと気のきく部下達なんだろう。
一人暮らしのテーブルに5人分のお皿とグラスは少々狭かったが、大勢での食事はやはりいいものである。
しかし、今はワイン片手にテレビに集中していた。
ちょうど、恋愛映画をやっていたのだ。どうやら遠距離恋愛がテーマらしい。
すると、祝さやかが尋ねてきた。
「亜季姉さんって、遠距離ってしたことあります?」
「うーん、ないかな。
そうなる前に振られたし」
「あっ」と皆が罰の悪そうな顔をした。
「いや、今の笑うトコだから」
先日、片山は無事プレゼンを終え帰っていった。
ずっと片山への気持ちを引きずっていたあたしも、別れ際には「幸せになれよ」なんて、一応上司の片山に調子よく言えるようになっていた。
あたしは、ワインの入ったグラスを残し、空になったお皿達をキッチンへと運んだ。
「手伝いますよ」
と、鳴海くんがあたしの隣に立った。
「いいのに。皆とゆっくりしてて」
向こうでは、3人がやはり恋愛トークで盛り上がっていた。
「いや、あの手の話はどーも苦手で。僕はこっちの方が落ち着きます」
「そう?じゃあ‥」
あたしは洗った皿を拭くように鳴海くんに渡した。
「あたしも鳴海くんといると落ち着くよ。
癒し系だよね、かわいいし」
最後の一言に彼はムッとしていたが、正直な気持ちだった。
「あれー、なんかそっちイイ感じじゃないですかー」
「ホントだ。あたしも混ぜてくださいよぉ」
と、香ちゃんと祝さん。
ただの酔っ払いだ。
もう1人、
立花くんは、じっとこっちをみているようだった。
なんだか、目が合わせられなかった。
気が付かないフリをした。
「うるさいぞぉ。だったら手伝え」
香ちゃんが立花くんが告白をしてくるのは時間の問題だ、と言っていた。
別にそうとは決まったわけではないが、なんとなくそれから立花くんと話せないでいる。