『紗香』-1
出会い系サイトで知り合った紗香と、メールの交換を始めて数ヵ月の月日が流れていた…
とある土曜日に、とある私鉄の駅に紗香を呼び出した…当初、実際に会う事に対して難色を示していたが…メールの交換を進めるうちに、僕に対しての信頼感と何より 性に対する紗香の欲求の増幅が…今日と言う日に繋がったのだろう…
約束の時間の二十分前に、紗香は改札口に姿を現した…ピンク色の半袖のV字に大きく開いた胸元で、ハート型のペンダントヘッドがキラキラと輝いていた…黒の少し丈の短いフレアスカートからは細く綺麗な脚がスラリと伸び…明るく染めたロングヘアーに大きな瞳…写真で見るより数段イイ女であった…
僕との待ち合わせの場所にたたずむと紗香は、ポーチから携帯を取り出すと何やらメールを打つ仕草…暫くすると僕の携帯がポケットの中でブルブルと振動を始めた…
『時間より、早く着きました。約束の場所で待っています。』
「僕もすぐそばに居るから…瞳を閉じて待っているんだよ…」
『分かりました。』
僕は、瞳を閉じた紗香の背後から歩み寄り…小さな声で話し掛ける…
「こんにちは…あっ…まだ目を開けないで…」
紗香は体をビクリッと反応させた後、無言で頷いた…僕は、黒縁の大きなサングラスで紗香の大きな瞳を覆った…サングラスのレンズの裏面には黒いビニールテープが張り付けてあり、紗香の視界の大部分を覆い隠していた…
「もう、目を開けても良いよ…」
僕が、紗香の耳元で再び囁くと、紗香は少し戸惑った様子で…
『えっ?…何も見えないっ…』
周囲の雑踏を気にしながら小声で囁いた…
「さぁ…行こうか…」
僕は、紗香の手を握るとゆっくりと駅の構内を歩き始めた…