冷たい情愛4〜冷たい目〜-1
久しぶりにおしゃれなランチ…となるはずが…
結局…上司の片山がいつも行く定食屋に落ち着いた。
「久しぶりだな、一緒に昼飯食うの」
「まあそうですけど。夜は殆ど一緒にいるし、特に珍しくは…」
夜一緒にいると言っても、仕事でという意味だ。
「俺は、お前と昼も夜も一緒でいいんだが」
(?何を言っているの?)
一瞬私には意味が分からなかった。
「あの時お前が妊娠してれば、今頃お前は俺の嫁さんだったのに」
私は吹きだしてしまった。
あんな出来事を、この人も覚えていたのか。
「そういえば設楽、あの件どうだ?」
「相手先も若いけれどしっかりした人で、こっちも足元見られないよう必死ですよ」
若いけれどしっかりした人…
遠藤さんの事だ。
「ああ、あの男か…知ってたか?」
「は?」
なんとも間の抜けた返事を返した。色気のない私。
「なんだその顔は…不細工にも程があるぞ」
冗談なのか本気なのか分からない片山の言葉。
「いえ、遠藤さんがどうかしました?仕事の話ばかりなので…何も知らないって普通じゃないですか」
「ったく硬いな…まあいい、俺たちと同じ大学出身らしいな」
片山も私もその大学・大学院で同じ研究室に所属していた。
同じ会社に就職したのは偶然ではなく、教授の推薦で入社しているのだ。
同じ大学…
全国区の大学なので、同じ大学出身の者と知り合うのも珍しくはない。
そんなのは当たり前なのに私は何故か、心が騒いだ。
彼…遠藤さんのバックグラウンドを知るのは始めてだし、それが自分との共通点だったことで私は少し鼓動が速くなっていた。
それだけ、私は彼の事が気に始めていた。