冷たい情愛4〜冷たい目〜-2
・・・・・・・・
田舎に住む私は仕事を終えた後、終電に間に合わずホテルに泊まることがある。
今日も、会社のロッカーにしまってあるお泊りセットのカバンを引っ張り出し…
ビジネスホテルに向かう。
幸い、経費で清算できる部分があるので、電車の時間を気にせず仕事に熱中できる。
新宿まで出て、ホテルへ歩く。
スーツ姿の男女は意外と少なく、若い男女や店の勧誘のバイトたちが道に溢れている。
何気なく視線を左へ向けた、その時だった。
昼間の顔だけしか見たことの無い、男を見かけた気がした。
遠藤さんだ…。
何故こんなところに…。
気がつくと私は走っていた。
「遠藤さんっ!」
一瞬、驚いた顔をした彼だったがすぐに仕事の顔を作る。
「あ、設楽さん。先日はありがとうございました」
メガネの下に、一重のきれいな目。
真夜中に近い時刻だというのに、ネクタイを崩さず昼間と変わらない姿。
ふと私は思い出した。
メールの最後の一文を…
無意識に彼の指を見てしまった。
大きな手…長い指。
彼は、仕事のメールにあんな一文を書いておきながら全く変わらない。
そして、自分の指を見つめる女にこう言った。