夏の朝-2
抱きしめる手が少し緩められ二人はちょっとの距離をおく。
すかさず私の鼻にキスをする。
思いっきり力をこめ、良和を突き飛ばすように私は体を離す。
良和は驚いた顔をしている。
「どうしたの?いつもしているのに…?」
「もう子供じゃないんだから、気安くしないで!」
小さい頃はほほにチュなんてことは家族のなかでよくあった。いまだに良和と春日兄には時々されるがさすがに私も良い年頃。軽いスキンシップはもういらない年頃なのだ。
そろそろ言わなくてはいけないともおもいつつ、いつもさっと気づかないうちにされるため、言い損なってしまっていた。
今日こそ言った!心の中でガッツポーズをして!ふと視線を下に下ろすと、良和は下を向いて悲しそうな顔をしている。
久しぶりに見る悲しそうなその顔は、クラスの男子と仲良く話していたのを通りかかった良和が足をとめ見ていたあのときの顔にそっくりだった。
「……気安くなんてしてない…」ボソッと言った。
「え?」
「俺は今まで一度も憂に気安くキスなんてしてない。」
いつになく真剣なまなざしが私をみている。
「俺はお前がかわいそうな子供だからとか、かわいい妹だからとか…そんなことで部屋になんか乗り込んでこないし……抱きしめたりしない。」
「え?」
「おれはこの10年間お前が好きだからにきまってるだろ!」
耳まで真っ赤にしている良和が上目使いでチラッと私の様子をみた。
長年の気持ちを言ってしまって夏の大空のようにすっきりした顔をしている
良和の思いにはじめて気がついた。憂は放心状態でみつめている。
いつも一緒にいすぎたせいだ……
しばらくたって春日兄が起こしにきても…
良和を見るなり温厚な春日兄が激怒していたのも…
私はただボー然とうわの空で聞いていた。