投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

赤い地獄
【戦争 その他小説】

赤い地獄の最初へ 赤い地獄 0 赤い地獄 2 赤い地獄の最後へ

赤い地獄-1

悲鳴、恐怖、臭気、飢え……。
そこにはすべてが充満していた。この地上に現れた地獄の中で毎日多くの劣等人種、すなわちユダヤ人達が殺されていく。
私は、髑髏にSSの記章を付け神聖なるドイツ帝国のシラミ駆除をするだけだ。
土地を持たず、流浪し諸外国の富を吸い上げるユダヤ人どもは迫害を受けて当然の輩だ。
そして、それが世界の為でもある。よく考えろ。ユダヤ人を受け入れたアメリカを!アメリカ式民主主義を!!有能で優秀な白人はその中心から追いやられウォール街はユダヤ人の巣窟である!
そのようなシラミは駆除されるべきなのだ。総統閣下の偉業は数千年先まで語り継がれるだろう。
現在、ヨーロッパのユダヤ人の数は2400万人。我々の処理能力は一日一万人。1950年に全ユダヤ人を根絶するためには、処理能力があまりに低すぎる。
今、目の前を歩くシラミが行く焼却炉。うちの施設で一日1500。せめて、その倍は欲しい。
死の天使達の選別が甘すぎるのだ。ガスも鉛玉もいらない。そのまま炉の業火の中で焼かれればいいのである。
ヒムラー長官もなにもかもが甘すぎるのだ。
私は、確信する。いつの日か歴史が我々が正義であったことを!!

だが、その正義も国家社会主義の理想もついえようとしている。
ソ連軍はすぐそこまで来ていた。

「大尉殿。ユダヤ人の処理ならびに全施設の破壊準備完了しました」

「よろしい」

私は、フォルクスワーゲンに乗り込み三年間勤めた我々の理想をあとにする。
ベルリンに戻った所で我々の運命は目に見えている。総統閣下の造られた町並みは、彼が望んだローマの廃墟同様に廃墟となるだろう。

『地獄へようこそ』

いつの日だったか、守衛の軍曹が書き込んだ落書きが見えた。
地獄……。
今となっては、ドイツ全土が赤い地獄だ。






赤い地獄の最初へ 赤い地獄 0 赤い地獄 2 赤い地獄の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前