MORE【1-前】〜出会い〜-1
「はぁっ はぁっ かはっ…」
もうどのくらい走ったのか。
てか,なんでこんな事になっちゃったんだろ。
今,もし神様にお願いできるなら…
少し前までの日常を返してほしい
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半日前のアタシに戻る…
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「秋だ!!食欲!!色欲…はないけど…。とにかく秋だーい!!」
『蛍那(けいな)…うざい』
「紗由(さゆ)ちゃん!!…ひど-い」
『だって最近そればっか。聞く方の身になれっての!!』
「う゛…」
柚尽 蛍那(ゆづき けいな)若さあふれる18歳(笑
容姿は…人並み?心優し-い 春野 紗由里(はるの さゆり)ちゃんはアタシの大事な友達。特に悪いことないし贅沢なほど幸せなんだろうなってわかってる。
ただ,ちょっと寂しいなって思うのが…母さんのこと。
父さんと別れた時アタシは9歳だったから9年前?俗に言うシングルマザーで弱音も言わずにここまで育ててくれた。
まあアタシには迷惑かけたくなかったんだろうからしょうがないんだろうけど…やっぱ…ねえ。
お互いに気を遣いあってきたんだよね。
この前も,母さんの彼氏がうちにいた時アタシは家の中に入ることができなくて…しばらく近くの公園にいたっけな。
そういうときに限って,(もう面影は薄いけど)生真面目すぎた父さんのことを考えてしまう。ってそれだけなんだけど…
『蛍那,今日どうする?家来る?』
あっDVD見せてもらうって言ってたんだっけ。
「ごめん!!母さんが今日早めに帰ってこいって言ってたんだ」
『そっかあ…じゃあまたにするか-』
「うん,それで頼む」
『何キャラだよ…』
紗由ちゃんに向けた笑顔とは裏腹に、アタシの心はざわついていた。
朝,母さんから早く帰るように言われた時から少しだけ悪寒は感じてたのかもしれない。
父さんが出て行ったあの日と…あまりに
似てたから。
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ガチャガチャ …ガチャリ
母さんとおそろいのストラップをつけた家の鍵。
2人になった時に《母さんはいつでもけいと繋がってるよ》ってもらった片割れ。世界には正義のヒーローなんていないって知ってても,自分の母親をヒーローと思えた。
「ただいま-」
『…………』
「…?(帰ってるっていったのに…)」
部屋の明かりはついていた。
いつものように部屋に荷物を置いてリビングへ…
「(買い物でも行ったのかな…)」
いないとわかってても母さんの寝室に行ってみる。
ドアがちょっと開いていた。
(あれ?人がいる…)
開けようとして…
手が止まった。