蒼い月の少女-8
「やだあっっ、、もうかんべんしてえぇ、、くうううんっっ、、あっ、また、まぁた、イっちゃうよぅ、いい、いっくうううーー!」
足音も無く静かに近づく逆光の女、、。
ぷりんと張りのある、形良いお尻。白のマイクロミニから見事な美脚が露出しています。
くびれた腰に手をやり、顎を引き、巨きなバストの胸を張り、般若の形相で狂態を睥睨する女。
「お・ん・ど・れ・らあー!このど糞まみれの、肥壷野郎めらがぁ!!キンタマへっこ抜いてケツの穴にぶち込んだろかぁぁ!!ええかげんにさらさんがああーっ!!」
まさに霹靂!目の前にカミナリが落ちたかのような、空気を震わす豪声!
凍り付く狂態の徒に、疾風の如く接近する逆光の女。
「シュッ!エイサっ!うりゃあ!」
臍下丹田からの気合いと共に、一人!また一人!!腰の入った見事な蹴りと突きで男女構わず打ち倒して行きます。上段回し蹴り、踵落し、後ろ廻し蹴り、肘打ち下ろし、掌打。
流れるような必殺技のコンビネーションで、一瞬の内に十数人が打ち倒されて、間抜け面を晒して失神しています。
転がるガキどもの中に、頭隠してお尻丸出し、最後に残った哀れな真砂子の姿が。
女はゆっくり近付くと、真砂子の股ぐらを ずばし と甲で蹴り上げました。
「綾さん、綾さん、大丈夫?」
気付くと、綾は蒼子の膝枕で寝かされていました。
「蒼子さん、、わたし、?」
「圭子センセっ!綾さん気付きましてよっ!」
どうやら車の中のようです。運転中の圭子はチラッとルームミラーで後部座席の様子を確認し
「取りあえず綾さんは私が一晩預かるわ。もうご両親にも連絡したし。それにしても誰が私達に知らせてくれたのかしら、、。」
「ええ本当に、当家の執事が電話を受け、すぐさま圭子センセにご連絡さしあげた次第で、女性の声だったらしいのですが、、。」
「とにかく四万十さん私に連絡くれてありがとう。あと始末は学園長が由香里さんの父親と協議するはずだから。綾さんの為にもこの件は内緒にね、、。」
「もちろん承知致しておりますわ。まあ、綾さん、、よほど疲れているのね。可愛いお顔でまたお眠りになって。」
綾は蒼子の手をしっかり握ったまま、安心したかのように再び眠りに落ちました。
「それではセンセ、あたくしここでけっこうですわ。今宵、見事なお月様が夜道を照らし出しておりまするゆえ。虫の声でも聴きながらゆるりと帰りますので。」
「そう、わかったわ、気をつけてね。また明日、蒼子さん。」
蒼子は慈母の微笑みをもって綾の髪を撫で、可愛い寝息を立てるその唇に、そっとくちづけました。
「蒼、子さん、たすけてくれて、、ありがと、、、。」
「ふふふ、綾さんたら、寝言。」
車を降り、ドアをパタムと閉め、歩き出した蒼子が、くるっと鮮やかに回転し、運転席の圭子に向き直りました。
「圭子先生、ごきげんよう。」
胸が締め付けられる程美しい微笑。
言うと蒼子は坂の上をゆっくり歩いて行きました。
蒼い月明かりで逆光になる後ろ姿を、圭子は見えなくなるまで見送りました。 終