十八の冬〜カガミヅキ-5
「じゃあ、お前俺が話し終わった後なんて言ったか覚えてるか」
『え……?』
やっぱりなと思いながら、それでも必死に思いだそうとしているのを見ると、顔が綻ぶ。
おいおい、お前重大な話をするんじゃなかったのかよ。
わしゃわしゃと雑に頭を撫でる。真理はこの撫でかたが一番好きだった。
「シリアスは似合わない」
『え?』
「一年だって二年だって俺は待てるから。気にすんなよ」
『ゆ……』
「俺、バイクの免許取ったからさ。必ず……必ず迎えに行く。そして、一緒に戻ってこよう」
やっと言えた。
瞬間、真理の顔がくしゃりと歪む。
そのまま胸に顔を擦りつけられ、ちょっと焦ってしまった。
俺達は、シリアスになりすぎてたんだ。
一年会えないことが、まるで今生の別れみたいに思えてさ。
だけど、今目の前にこいつがいることが何よりの証拠だ。
また会える。絶対に。
後で梨花ちゃんに謝ろう。
もう俺は大丈夫だってしっかり言わなくちゃ。
真理をあやしながら、頭の中にはあの別れ際に見た桜吹雪が焼き付いて離れなかった――。