十八の冬〜カガミヅキ-2
『真理』
宛名にはそう書いてある。余程焦っていたのか、俺は思わず携帯を落としてしまった。
慌てて携帯を拾い上げてメールを確認する。だが手が震えて上手くボタンを押すことが出来ない。
やっとのことで受信メールを開くと、ただ簡潔に一言書かれていた。
『海で待ってる』
俺はメール画面を閉じずに駆け出していた。
真理は、教師になりたいって言っていた。
いつかこの街に教師として住みたいって言っていた。
あいつは教えるのが上手だから、きっと教師になって生徒になにかを教えるのだろうと俺は考えていた。
そして俺は俺で、そんな真理の夢に相槌を打ちながら必死にやりたいことを探して……。
そんな、普段の生活からは少し離れたシリアスな話をする時は、必ず二人でバスに乗った。
駅前まで必死に走る。あの頃と同じ様に、俺はバスに乗った。
駅前の停留所からバスに小一時間も揺られると、海が見え始める。
該当が道路を照らしているせいか、海が対照的に暗く感じられた。
いつも海へと降りる階段に腰かけて、海を見ながら真理と話した。
そして一通り話終わってから、どちらからともなくよく言ったんだ。
《シリアスは似合わない》って。
瞬間、何かが頭で弾ける。
そんな俺の心を見透かすように、バスは目的の停留所へのドアを開けた。
俺はあらかじめ握っていたバス代をぶちこんで、バスから駆け降りた。