結界対者 第三章-7
「なんだ、これ」
「昨日のアイスのレシート。 さっさと精算しなさい? 裏切り者!」
「へ?」
「奢るって言ったでしょ? 裏切り者!」
「わかった、わかったから、もう裏切り者呼ばわりは止めてくれよ」
渋々と財布を取り出す。
そして、受け取ったレシートを睨むと、そこには
「な、なんだ? この1680円って!」
予想外の値段が打たれていた。
「ふん、アンタはなかなか来ないし、つまらなかったから、チョコミントをキングサイズでトリプルで食べて、そのあとにデラックスサンデーも食べてやったわよ」
得意気に間宮。
ったく、ギャル曽根か、オマエは。
「ほら、さっさと出すもの出しなさいよ、裏切り者!」
「はいはい、わかったよ、わかったから」
まったく、高くついたもんだ。
今度、同じ様な場面に出くわしたら、本気で気を付けようと思うよ。
間宮の奴、マジで侮れないぜ。
よくよく考えると、この『うまくいかない』流れは今に始まった事ではなく、昨日の三馬鹿とゴロツキの一件も、まさしく『うまくいかない』の一言に尽きる内容だった。
俺の経験則によるところ、一度この流れが出来てしまうと、更に同じ様な事が立て続けに続いてしまう可能性が大きい。
まあ、二度ある事はなんとやら、ってやつだ。
そんな事をボンヤリと考えながら歩いていると、左隣を歩く間宮が此方を見上げながら
「ちょっと、何カツアゲされた中学生みたいな顔してんのよ」
と、怪訝な顔を向けた。
その表現はストライクだが、今はイマイチ強く言い返す気にはなれない。
「別に、ただ……」
「ただ?」
「なんとなく、昨日からツイてなくてさ?」
「え? だって、三馬鹿を華麗に助けたんじゃないの?」
「いや……」
ある意味、無様だった訳だが。
「ははーん? 助けに行ったは良いけど、逆に返り討ちにされちゃった、とか?」
「ちげーよ」
おいおい、相手はヤクザ崩れみたいな奴らだぞ?
もし、そんなだったら、今こうして五体満足に歩いていられるかってんだ。
「じゃあ、何よ」
「うん……」
返す言葉に困って、歩きながら辺りを見回す。
すると、不意に、いつもの白い校舎が、倒れかかる様に視界に飛込んできた。
どうやら気付かないうちに、俺達は学校のすぐ近くまで来ていたらしい。