結界対者 第三章-5
「やれるもんなら、やってみろ、バーカ」
ニヤリと吐き捨てた俺に、男達が一斉に飛びかかる。
「ヒャハハッ、死んだぞ、おまえっ!」
囲みのうちの、誰かが叫ぶ。
そんな事を言う奴は、本当に一度自分が死にそうな目に遭えば良い。
いや、それとも、今から俺が、遭わせてやろうか?
「風よ、俺を中心に、少量の旋風を成せ」
イメージを紡ぎながら、風を呼ぶ。
少しでいい、これなら三馬鹿からは、俺が自分で敵をふりほどいた様に見える筈!
男達の罵声と拳が降り注ぐ。
俺は、呼び集めた風を放つ!
「今だっ!」
足元から沸き上がる風が、俺を包み……
同時に、俺を取り囲む全てを、瞬時にそこから弾き飛ばした!
直後……
辺りを見回すと、囲んでいた数人全てが俺を中心に倒れ、ヒクヒクと悶えながら、路面に張り付いているのが見える。
この前の様に、殺すまでは至なかったものの、少々やりすぎてしまった、か……?
「まいったな……」
思わず呟く、そして気が付いて顔をあげると、そこには呆然と此方に顔を向け立ち尽くす、三馬鹿の姿があった。
「う…… ああ…… 」
三馬鹿のうちの一人、ピアスの口から、声にならない驚愕の声が力無く漏れる。
そして、その両脇に居る二人などは、その声すらも出せない程に全身を硬直させてしまっている。
無理もない、目の前で、五、六人近い男達が、紙屑の様に吹き飛んだのだ。
驚かない方が、どうかしてる。
始めは、バレない様に僅かに力を使って、要領良く場を治めるつもりだった。
しかし、そんな俺のもくろみは脆くも崩れ、今は別の意味で非常にヤバイ状態だったりする。
完全にバレたな……
いや、結界とか対者の事とかではなくて、俺が普通の人間ではない事が、だ。