結界対者 第三章-4
「絡まれてるのかしら」
「みたいだな」
すると、視線を奪われた二人のその先で、三馬鹿のうちの一人が、何かナイフの様なものを突き付けられた。
「おい、間宮、ヤバくないか? あれ……」
「ふん、自業自得よ。悪さばっかりしてるから、痛い目に遭うんだわ。 さあ柊、行くわよ?」
間宮の言うことにも一理あるが、見捨てて行くのは、どうも寝覚めが悪い気がする。
「柊?」
「ん? ああ…… 」
「ちょっと、アンタ!まさか、助けようってんじゃないでしょうね!」
俺だって別に、そこまでお人好しじゃないぜ。
ただ……
「いや、ちょっと様子を見てくるかな」
「えっ? 何よ、それ!」
「うん、アイス屋には先に行っててくれ。すぐに追い付くから」
「ちょっと、一人で並んでろって訳?」
「わかった。アイスは俺の奢りでいいから、な?」
「……仕方ないわね」
奢るという言葉に納得したらしい間宮は
「早く来なさいよ」
と言い置くと、駅の方向へ姿を消した。
そして俺は、窮地に陥った三馬鹿の方向へ靴先を向ける。
別に、助けようなんて思っちゃいないぜ?
奴らの困った顔を、間近で見てやりたいだけさ。
近付き、間近で見た三馬鹿は、やはり真っ青な顔をしていて、
それを囲んでいる奴らもまた、やはり柄の悪いゴロツキ然とした連中だった。
まるで週間少年誌の不良マンガから飛び出して来た様なキャラクターに、俺は思わず呆れた笑みを浮かべる。
すると、それに気付いたゴロツキのうちの一人が
「おい、テメェ! 何見てんだよ、オラ!」
と、これまた御約束の様なセリフを投げ掛けてきた。
「アハハッ、なんだ、見られて困るなら、何処かに隠れてやれよ」
俺の一言が、余程気に障ったのか、ゴロツキの皆さんの熱い視線が、一斉にこちらに向けられる。
そして、その中には、まるで憔悴しきった様な三馬鹿の視線もあった。
「柊…… おまえ、何やってんだ……」
三馬鹿のうちの一人、あのやたらとピアスを開けた耳の持ち主が、弱々しく俺に呟く。
「なんだ、この馬鹿はテメェらの仲間か?」
ピアスの言葉に、ゴロツキのうちの一人が、激しく声を荒げる。
「だったら、どうだってんだよ?」
「どうもこうもねえ……」
その言葉を、まるで何かの合図と受け止めたかの様に、それまで三馬鹿を囲んでいた連中が、うろうろと俺の周りを囲み始めた。
そして、
「おもしれぇ、こいつからヤッちまおうぜ?」
と、鼻息を荒くする。
まあ、どうせ、こうなるとは思っていたがね。
とりあえず、間宮も居ないし、殺さない程度にやらなきゃな。