結界対者 第三章-3
すれちがいざまに、三馬鹿達が「いつ見ても気持ち悪い」と呟いた事、そして周囲の何となく距離を置いた視線や態度……
それら全てが、間宮の持つ「赤い瞳」に対してのものだった。
気にしてるんだな……
それに気付いてしまって、なんとなく気不味くなって、思わず黙りこむ。
しかし、その沈黙に更に気不味くなって、俺はおどけた様に再び言葉を放った。
「じゃあさ、俺なら構わないって事かよ?」
その言葉に間宮の足がピタリと止まる。
そして、振り返りながら
「だって、アンタはアタシと同じだもの!」
と、赤い双眸を丸く、当たり前の様な、そして得意気な口調で投げ掛けた。
「はぁ?」
「いわゆる、同じ穴のムナゲってヤツよ!」
「……ムジナだろ?」
「……そうとも言うわね」
踵を返して、何事も無かった様に再び歩き出す間宮。
そして俺も、苦笑いを浮かべながら、それに続く。
やがて二人が大通りを抜け、駅前に差し掛かる頃には、午後の刺すような日差しは淡いオレンジ色に変わろうとしていた。
―2―
この街の中心にある神埼駅は、二本の主要路線が交差する連絡駅になっていて、その為か駅周辺にはちょっとした繁華街の様な路地が何本もあったりする。
いや、実はその事に気付いたのはつい先程で、俺は立ち並ぶ夜向けの店々の中に、ワリの良さそうなバイト先はないか、路地に差し掛かる度にチラチラと覗いてみたりしていた。
すると、それを横目に見ていた間宮が
「なーに? 柊も、ああいうエッチなお店が気になるんだ? やっぱ男の子だねぇ」
とニヤニヤと笑いなが、とんでもない勘違いをしてみせる。
「ち、ちがうぞ、俺は何かワリの良さそうなバイト先を……」
「あらあら、必死だわねぇ」
更にニヤニヤと間宮。
いいかげんに腹立たしくなって来て
「お前なぁ…… 」
と、声を振り上げようとした、その時!
視界の隅の遥か彼方に、なにやら見覚えのある人影が、チラリと映った気がした。
それは、間宮にとっても同じだったらしく、そこに向けた俺の視線をなぞりながら
「あれ? ねえ、アイツら……」
と、思わず溢す。
「ああ、三馬鹿…… だよな?」
そこには紛れもなく、あの三馬鹿が居た。
そして、それを囲む様に、いかにも柄の悪そうな数人の男達が立ち……
どうやら何か厄介な事になっている様子だ。