結界対者 第三章-24
「うそ…… 」
……確かに命中した。
間宮の放った閃光は、確かに命中したのだ!
なのに……
ガーゴイルは消えるどころか、更にその挙動に激しさを増し、眼下へ向けて火を吐き、炎の雨を降らし続けている。
「馬鹿な! 命中したろうがっ!」
叫んでも仕方がないなんて、解らなくなるくらい納得がいかない。
おそらく、それは間宮も同じで、弾丸を受けて尚も消えずに飛び続けるガーゴイルへ、引き続き背後から数発……
幾度もの銃声と間宮の叫び声が響く。
「なによ! なんなのよ、これ!」
全てが当たっている、それは間違いないのに、ガーゴイルが消えないのは何故だ……
それとも、もしかして……
「間宮! また飛んで、ヤツとの距離を詰めるかっ?」
「柊!?」
振り返りながら叫ぶ。
「やろうぜ、また飛ぼう! 上手くやれるさっ!」
「待て、その必要は無い!」
間宮へ向けた俺の声を遮ったのは、崩れていた筈の樋山の声だった。
「樋山…… さん!?」
「自分の不始末ぐらい、自分でなんとかするさ。もっとも、手遅れかもしれないがね」
「樋山…… アンタ、何を……」
「セリ、君の赦しの短筒は、単に強大な霊力を込めた鉛弾を放つ道具に過ぎない。そしてそれは、ガーゴイルの体に達する前に、その周囲の高温に融解し蒸発してしまう」
「しかし……」
「だから、君達は下がっていろ。 これは、私がやらねばならぬ事だ!」
言い置いたまま、窓辺に向かい、静かに歩き出す樋山が、紅く光を放ち始める。
「樋山…… それ……」
その光景を目に映し、思わず呟く間宮に
「心配しなくていい。私とて、かつては対者だったのだ」
静かに微笑みながら。
やがて、窓辺に辿り着いた樋山は両腕を広げ
「ゼル…… イクス…… トゥルス ……シース…… 」
何か、呪文の様なものを唱え始めた。
と、同時に、樋山を包んでいた紅い光は、そのまま炎へと変わり、燃え上がりながら激しさを増していく。