結界対者 第三章-23
「お、おいっ、これ?」
「何なのよっ、うあああっ?」
耐えきれずに声をあげ倒れ込む俺の視界に、同じく放り出させる様に倒れ込む間宮が見えた。
振動と轟音は更に続き、倒れたままの俺達を右へ左へと揺すぶり続ける。
「間宮…… だ、大丈夫かっ?」
「柊っ…… 樋山、樋山はっ? 何が、何がどうなってんのよっ!」
先程の窓辺を必死に睨む間宮につられて、俺もそこに顔を向ける。
閃光の窓辺は、いつしか赤く燃え、そこには光に映し出されながら何かを叫ぶ樋山の姿が在った。
「どうしたっ、何が起こったっ! 現状を報告しろっ!」
続く叫び声の相手は、耳元に握りしめられた携帯の様で、それは何処か虚しく滅茶苦茶に散らかった部屋中に響き続けている。
「樋山さん、あんた……」
なんとか起き上がり、そこへ慌てて駆け寄ると、赤く輝く様に見えた窓の外には、想像もつかない程の光景が広がっていた。
「これは…… 一体……」
中庭の全てが燃えている!
そこに居た筈の人々も祭壇も、全てを飲み込んで、紅い炎が烈しく燃えている!
その突然に、逃げる間も無かったであろう人々は、哀れみを感じさせない程の姿、黒い塊になり果てて炎の合間に転がり、中庭を囲んでいた真新しく白く輝いていた筈の壁は、まるで廃墟の様に黒く欠け落ちている。
そして、それらを見下ろす様に、悠然と炎を吐きながら、先程のガーゴイルが紅く光を放ち、炎の海と化した中庭上空を何度も廻っている。
「まさか…… こんな……」
そう呟いた樋山は、いつしか電話に叫ぶのを止め、床に膝をつき力無く崩れていた。
「だから、言ったのよ…… 簡単じゃないって……」
呟く間宮の声に、俺は改めて、樋山の企てが失敗した事を思い知る。
そして、治まりつつある轟音と、なおも続く微かな振動を感じながら、再び紅い窓辺に立ち、間宮へと振り返った。
「柊……」
「行こうぜ、 なんとかしなくちゃ、な?」
頷きながら間宮が、その細い首から提げた銀時計を外し、頭上へとかざす。
「刻・縛」
噛み締める様に呟くと、その悪夢の様な世界の全てが停まり、俺は渾身の力を込めながら旋風を呼ぶ。
そして
「風よ、目の前のガラス窓を吹っ飛ばせっ!」
叫びながら拳を突き出した。
唸りを上げて風が向かい、紅く光るガラス窓を粉々に砕く。
そしてそのまま、背後で間宮が、赦しの小筒を構え狙いを定める気配を感じながら、飛び散り落ちていくガラスの破片の輝きを瞳に映す。
やがて、間宮のそれはガーゴイルの元へと放たれ、全てが終わ……