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結界対者
【アクション その他小説】

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結界対者 第三章-22

―9―

「……間宮っ!?」

 それは、Tシャツにハーフパンツという、如何にも部屋着といった姿の間宮セリ、本人…… だった!

「んんっ? 柊っ……? あんたが先に来てるなんて珍しい…… それにここ、どこなの?」

 困惑する間宮を見ながら、俺はなんとなく理解する。
 先ほど焔の大石に、あのガーゴイルが触れた、だから間宮の中にある「対者としての機能」ってヤツが、忌者が来た時と同じ反応を示して……
 この場所へと結果的に導かれてしまったという事を。

「いつもの、襲来が迫る感覚は確かにあったけど…… こんな、いきなりなんて。
 しかも、ここ、結界じゃないじゃない!」
「いいや、セリ! ここは結界だよ! 焔の大石を、あの祭壇の頂上に私がセットした」

 樋山が、笑みの消えた眼差しで言い放つ。

「樋山…… 何であんたが! それに柊もっ!」
「そろそろ、君も来る頃だと思っていたよ、セリ」

 そろそろ? コイツ……

「樋山さん、アンタ、間宮が此処に導かれるって、解ってたんですか?」
「当たり前だろ? 結界に使い魔を干渉させるんだ、導かれない方がおかしい」

 畜生、間宮の気持ちも知らないで!

「ごらんセリ! たった今、結界の一つが消え逝こうとしている」
「樋山? アンタ、何を……」

 言いかけた間宮も、先程の俺と同じく、中庭の見える大きな窓辺へと走る。
 そして

「ちょっとっ! 何よ、コレ……」

窓辺にに辿り着くと、驚愕の声を漏らした。
 
「あのガーゴイルに、今から焔の大石の力を全て吸収させる」
「やめて!」
「駄目だ、これが成功すれば、私は同じ様に他の結界にも適する使い魔を干渉させて、全ての結界を消滅させる! そしてこの、災いの連鎖に終止符を打つのだ!」

 樋山の気迫が部屋中に響き、俺はどうする事も出来ずに、ただ立ち尽くす。
 しかし、間宮は暫く黙った後、うつ向いたままで胸の前に右手をかざし

「お願いだから、やめてよ」

と、呟いた。
 と、同時に、その右手に白銀の短銃「赦しの小筒」が浮かびあがる。

「無理だ、もう止められない」
「でないとアタシ…… あんたを撃たなきゃならなくなる」

 言いながら顔を上げ、その銀色の短銃を構えた赤い瞳が、鋭い煌めきを放つ。
 しかし樋山は動じず、先程の姿勢のまま言葉を続ける。 

「セリ、どうか最後まで見てほしい。 私は自分の宿命を終わらせたいのと同じ様に、君の死ぬまで戦い続ける宿命を終わらせたいのだ。君のそれは悲しくて仕方がない…… 結界さえ消えれば……」
「関係ない!」
「……?」
「関係ないのよ、アンタの自分自身の宿命を恨む気持ちも、アタシの戦い続ける宿命も! そんな簡単な事じゃないの! だから…… 」

 間宮が言い終えようとした、その時!
 突然、中庭に面した窓が、刹那の閃光を放った!
 それと同時に、激しい振動と轟音が、この部屋の全てを襲う!


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