親愛なる平日を。 -1
好きな時間。
夜明け前。
薄暗い窓。
静寂。
何気ない平日を僕は愛している。
整ったハンガーにかかるワイシャツも
積み上げられた単行本も。
色褪せた障子も
ポスターも
朝が来ると日常に覆い被されて見えなくなってしまうから。
朝が来ると光がこの静寂を打ち破ってしまうから。
まだ何物も干渉しない。
そんな絶対空間に身を寄せて。
取り留めない空想の中で。
僕は、
僕は、何を見つめているのか。
時間が止まったかのようなひととき。
命の選択。
天井の一つだけ煌めくあの蛍光灯も。
一つだけだからいい。
それは僕を必要以上に照らさないから。
一つだけだからいい。
全てを闇に隠さないから。
時は止まない。
止まないから。
このひとときをめいっぱい愛そう。
闇と光の狭間の黄昏。
死と生の間のインターバル。
それは何も生み出さないけど。
そこに永遠に留まれないけど。
きっと僕は愛している。
この繊細で曖昧なひとときを。
この崩れて消えて記憶に残らない時の休息を。
さぁ朝が来る。
静かに。
さぁ目覚めよう。
そしてまた愛そう。
この親愛なる平日を。