僕らの日々は。〜冬の日、幸運〜-3
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…というワケで、僕たちはおみくじを買った。
「春風、勝負よ」
「おいおい、運勢で勝負してどうすんだよ……。まぁいいや。いい方が勝ち?」
「もっちろん!じゃ、春風からね!」
「別にいいけど……どうせなら一緒に開けない?」
「ダメよ。お楽しみは後に取っとくものでしょ?」
「それ、僕には適用されないんだね……ま、いいけど」
くじを開ける。
そこに書いてある文字は…………………、
「………大凶…。」
「あっはは!落ち込むことないわよ春風!こんなの考えようだって言ったでしょ?大凶が出たんなら、これ以上悪くならないんだから今から良くなる一方よきっと!」
「…まぁ、そう考えれば悪い気はしないか。でもこれで負けはほぼ確定かぁ」
「運も実力の内ってやつよ。諦めなさい」
そういって一葉はくじを開いて、
「………大凶…」
固まった。
「なんだ一葉もか。この勝負、同点だな」
「むぅ。こんなハズでは…」
悔しがっている一葉を見ていると、なぜだかある考えが思い浮かんで、しかもそれを言わなくちゃいけないような気になった。
これも『祭の魔力』とやらのせいだろう、きっと。そういうことにしておく。
「……なあ一葉」
「何よ?」
「こう考えればいいんだよ。確かに大凶は悪いかもしれないけど、大凶を引くなんて低確率な事を二人同時に引き当てたんだ。これってかなりラッキーな事じゃないか?」
我ながら詭弁だと思う。
大凶を引いた時点で、もうラッキーでも何でもないのだから。
……………でも。
「……そうね!むしろ大吉を引くより幸運を呼ぶ気がするわ!たまにはいいコト言うじゃない春風!」
「はいはい。それじゃ、おみくじ結びに行こう」
一葉が嬉しそうにしていることだし、別に詭弁だろうと何だろうといいさ。
…そんな風に思った、ある冬の日の事。
☆……☆……☆……☆
「あ、でもほら。おみくじの『学業』のところ、私は『まぁ良し』だけど春風は『あきらめよ』だから、勝負はやっぱ私の勝ちね」
「……もういいよ、それで」
『冬の日、幸運』 完