「イジワルな彼〜新たな一面〜」-1
「落ち着いた?」
「はい…」
穂香は泣きはらした目を擦り、笑顔で答える
無理やり笑う穂香を見るのはツラかったが、自分以上に穂香のがツライという事がヒシヒシ伝わってくる
「さて!仕事、仕事!!」
空元気な声で事務所に戻っていく
ヒロは穂香の背中をみて“ごめん”と呟く事しか出来なかったーー
それからというものの、顔合わせ,衣装合わせ,記者会見,インタビューなど慌ただしい日々が続き、仕事以外ろくな話が出来ない日が続いた
そんなある日、事務所での打ち合わせが早く終わった
“はぁ〜久しぶりに早く帰れる…”
穂香は自分の席に戻り、ゆっくりと緑茶を口にする
ーブブブブブー
バイブ音が響く
“メールだ、誰だろう?”
〔この後の予定は?〕
すぐそこで、テレビを見ているヒロからのメールだった
“えっ!?嶋田さん!?”
イキナリの事で戸惑ってしまう
急いで予定がない事を返信をすると、当たり前だが、斜め前のヒロの携帯が鳴る“何か緊張しちゃうな‥”
〔ハンバーグ作れる?〕
「ハンバーグ?」
思わず、声に出してしまった
隣の席で同期の《林祐一郎(ハヤシユウイチロウ)》が覗き込んでくる
「‥あ、ううん!」その様子を見て、ヒロが笑いをこらえている
〔家に作りにきてよ!腹減って死にそう〕
“…2人っきりになれる!”
ドキドキしながら0Kと返信し終えた時、「小山、これからデートだろ」
ドキーッ!!!
林が声をかけてきた
「な、な、な‥」
思わず、どもってしまう
「…あっマジで?何、彼氏出来たの?」答えられずにいると「…出来たんだ。ふーん、彼のドコが好きなの?」
“もぉ!前に嶋田さんがいるのにぃ‥”「〜林クンには関係ないでしょ!お疲れ様でした!!」
逃げる様に事務所横の非常階段に座り込む
“はぁ、顔が熱い。きっと今真っ赤な顔してるんだろうなぁ…”
「彼氏ってどんなヤツなの?」
“えっ!”
顔を上げるとヒロが笑っている
二人にとって非常階段は秘密待ち合わせ場所になっていた
「知りたいなぁ、どんな所が好きなのか!」
「んもぉ、嶋田さんまで‥」
「いーじゃん!教えてよ!それとも、俺の事なんて……」
ブツブツ文句を言っている
“嶋田さんって案外甘えん坊?”
穂香はそんなヒロを見て嬉しくなる
「‥夢に向かって頑張ってる所とか、大きい手とか、イジワルだけど優しい所とか…全部好き!!」言い終わると恥ずかしくなってきた
「〜なんちゃって!へへ!‥嶋田さん?」
呼びかけに答えず、くるっと後ろを向く「あぁ〜照れてちゃいまし…!」
顔を覗き込むと、耳まで真っ赤なヒロの顔
「こっち見んな!」“やっぱり、嶋田さん可愛い”
「何、笑ってんだよ!」
もう、いつもの自信満々のヒロに戻ってる
「いーえ!何でもありません」