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伊藤美弥の悩み 〜受難〜
【学園物 官能小説】

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高崎龍之介の悩み 〜女難〜-10

美弥と別れた龍之介は、体育用具室にやって来ていた。
 器械室もそうだが、体育用具室もまた薄暗くて埃っぽい。
 何かありそうだという予感のせいで全身に悪寒を覚えつつ、龍之介は体育用具室へ入る。
 念のためにと龍之介は、入口を開けておいた。
 籠に入った野球にバレーにバスケットなど、種類を問わない大小のボール。
 使い込まれ過ぎて使用不能になった床運動用マットが、部屋の隅で折り重なっている。

 ガラッ!

 開けておいた入口の扉が、耳障りな音と共に閉まった。
「!」
 龍之介は、慌てて背後へ振り向く。
「お待ちしてました、先輩……無駄ですよ、鍵掛けてますから」
 閉まった扉に取り付いてがたがたやり始めた龍之介へ、谷町菜々子は言う。
「で、これが鍵です」
 言うなり菜々子は、鍵をスカートのポケットに落とした。
「ねぇ先輩、伊藤先輩よりあたしの方が可愛くてスタイルいいと思いません?」
 龍之介はそれに答えず、ジリジリと後ずさる。
 しかし……乱雑に物が置かれていて、お世辞にも自由に動けるとは言い難い用具室だ。
「うわっ」
 案の定マットに足を引っ掛けて、龍之介は仰向けに転んでしまう。
「あら、待ち切れないんですかぁ?」
 年に似合わぬ妖艶な笑みを浮かべ、菜々子は制服の上半分を脱いだ。
「それとも伊藤先輩じゃあできないえっちな事、やってみますぅ?」
 にやっと笑った菜々子は、スカートとショーツをも脱いでしまう。

 ぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつぷつっっっ!!!

 全身に鳥肌が立つ音を、龍之介は聞いた気がした。
「うふふ……先輩のぶっといおち〇ち〇が欲しくて、あたし今朝から濡れっ放しなんですよぉ」


 どちらも男の手というだけなのに、持ち主が違うとこうも気持ちが悪いものなのか。
 真継の腕の中で暴れながら、美弥は頭の片隅で変に冷静な思考をしていた。
 龍之介から抱き締められたり愛撫を受けたりしている時はひたすらに気持ちいいのに、真継の腕の中は虫酸が走る程に気持ち悪い。
「っくしょ……!」
 真継が呻いたかと思うと、腕の力が急に緩む。
「赤萩君……?」
「やりたくないんですよぉ……」
 美弥から離れ、真継は呻いた。
「何で惚れた女が他の男とくっつくお膳立てなんかしなきゃ……」
「!」
 知らなかった事実を聞かされ、美弥は驚く。
「赤萩君あなた、谷町さんの事が……!?」
「好きなんですよぉ……しかもこないだ、気付いたばっかなんです!」
 真継は半分泣いているような口調でそう言い、手近にあった道具を腹立ち紛れに殴り付けた。
「あぁ俺の初恋は寝取られで終わるんだあああっっ!!」
 切実な叫びに、美弥は同情を覚える。
「初恋は実らないってジンクスは、本当だったんだあああっ!!」
「実るわよ!」
 同情した揚句、本音がぽろりとこぼれた。
「私の初恋は、実ったんだから!」
 真継は美弥へ、胡乱な目を向ける。
「えぇそうでしょう高崎先輩が相手ですもんね」
「違う人よっ」
 美弥の反論に、真継はきょとんとした。
「あ……今は関係ないから省くけど……私は龍之介以外の人を相手にして、初恋を実らせたわ。あなたにもまだチャンスは残っ……」
 美弥はふと言葉を切る。
「……待って」
 額に手を当て、美弥は呟いた。
「あなたがここにいるって事は、まさか龍之介と谷町さんが……」
「体育用具室で二人きりですよぉ?」
「まずいわ!!」
 美弥の声に、真継が驚く。
「龍之介が危ない!!」
 美弥は真継に向かって叫んだ。
「来て!!あなたは谷町さんを取り戻し、私は龍之介を取り戻す!!共闘できるはずよ!!」
「え……共闘?」
 訳が分からないという顔をする真継に、美弥は言う。
「谷町さんに頼まれて、邪魔をしたんでしょう!?好きな女の子が他人を傷付けようとしてるのを、指咥えて見てる気!?」
「でも俺は菜々と約束を……!」
「そんな約束反古にしなさいっっ!!」
 美弥の剣幕に押され、真継は思わず頷いた。
 反古にする。
 そう言えばそんな手段があったなと、真継は自分の間抜けさに頭を抱えたくなった。
「ほら早く!行くわよ!」


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