僕らの日々は。〜夏の思い出〜-2
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同じ頃。
沖田家、春風の部屋。
「……なんだコレ?」
部屋の掃除をしていたら古いノートが出てきた。
タイトルは、
『夏休みの絵日記帳』。
下の方に小さく
『4年 1組 沖田 春風』
…と僕の名前が書いてある。
「懐かしいな……。どんな事してたんだろ、僕」
ちょっとわくわくしながら開いてみた。
と、ある日の日記が目に留まった。
「あれ、この日はやけに長いな……?」
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8月 12日 天気:晴れ
今日は、友達の一葉ちゃんと山へあそびに行きました。
だけど一葉ちゃんが、
「こっちに何かある気がするわ!」
「あっちに行ってみましょうよ!」
……というのについて行くと、いつの間にか見た事もない所まで来てしまいました。
昼なのにうす暗いし、なんだか夏なのに少し寒かったしで、恐かったです。
しばらくすると一葉ちゃんが、「犬がいるよ」と言っているので行ってみると、確かに黒くて大きいのがいました。
ただ、犬ではなくてオオカミでした。
恐かったです。かなり恐かったです。しかもなんかかなりお腹が減っているみたいで目がギラギラしていました。
オオカミはじっとこっちを見ていました。が、一葉ちゃんが
「大きい犬ねぇ、おいでおいで、チッチッ」
とか言っていたらとびかかってきました。
僕はあわてました。しかし、一葉ちゃんはそんなことお構いなしに犬を押さえ付けて、お腹をなでていました。
オオカミは嫌がって暴れていましたが、一葉ちゃんは気にもせずなでつづけました。
その上そのオオカミを勝手に『ゴンザレス』と命名しました。
やっとのことで解放された変な名前を付けられたオオカミは、フラフラとどこかへ行ってしまいました。
なぜか『あいしゅうただよう背中』とはあの事なのだと理解した気がしました。
やっと山を下りたころには夕方になっていました。
帰り道で知らないおじさんが、ヤクザ屋さんと思われる黒スーツサングラスの人にからまれていました。
ヤクザの人は
「なんじゃワレ人の車に傷付けといて謝って済むと思っとんのか弁償じゃ弁償」
とか言っていて、おじさんはひたすら謝っていました。
僕はかかわりたくなかったのに、一葉ちゃんは
「弱い者いじめはやめなさいっ!」
とか言いつつ見事なフォームで足を振りかぶり、
ヤクザ屋さんの股間を強烈にけり上げました。
見てるこっちが痛くなるくらいに見事なキックでした。
ヤクザ屋さんが悲鳴を上げる前にさらに数回けると、ヤクザ屋さんは泡をふいてたおれ、ピクピクし始めました。
知らないおじさんと僕たちはしばらく見ていましたが、その後全速力で走って逃げました。
本当に、一日に何回も死ぬかと思いました。
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「…………………」
パタン、と日記を閉じた。
……まぁ、とりあえず。
「苦労してたんだな、僕…」
そう呟いてノートをしまった。
『夏の思い出』 完