Strange days-6
「…だから止めろって…由貴」
そう言うと、再び寝息を立てた。実に分かり易い寝言だ。
それを聞いためぐみは、なぜか無性に腹が立った。両手でメガホンを作ると、大きく息を吸って敦の耳元で大声を炸裂させた。
「アツシッ!起きろーっ!」
次の瞬間、バネ仕掛けのような勢いで起き上がった敦。視点の定まらない眼で声を追った。かろうじて女性だと認識出来る程度にしか見えていない。
めぐみは不敵な笑いを浮かべながら、敦を責め立てる。
「由貴さんって誰ですか?」
「何?」
徐々に視点が定まり、ようやく目の前にいるのがめぐみと分かった。
「何だ。オマエかぁ」
と、敦は緊張を一気に抜くと両手を伸ばしながらアクビをした。
「今、由貴って言ってましたよね!誰です?」
「さあ、覚えてないな」
夢の出来事を敦は鮮明に覚えていた。が、そんな事をめぐみに言う必要は無い。
「それより今、何時だ?」
「8時10分です」
「何でこんなに早く起こしたんだ?」
仏丁面を露にして敦が訊くと、めぐみは神妙な面持ちで答える。
「敦さんに相談があるから早めに来たんです」
「オレに相談だって?」
めぐみはゆっくりと頷くと、昨夕の沙那との出来事を話出した。
「私は沙那さんに〈力になる〉って言ったんです。ですから上条さんにも〈無理強い〉せずに引き受けてもらいたいんです」
敦はめぐみの話を一笑に付した。
「気持ちは分からんでも無いがオレは知らんよ。自分で始末するんだな」
そう言って立ち上がり応接室を出ようとした時、めぐみは敦の歩を遮ると、
「上条さん。言ったでしょう。〈無理強いしたくない〉って」
「どういう意味だ?」
敦はめぐみを睨んだ。めぐみは笑みを浮かべて敦の耳元で囁いた。
「昨年のクリスマス・イブ、沙那さんをここの仮眠室に泊めましたよね。しかも、全裸で襲おうとした…」
敦の顔に初めてうろたえの色が映る。めぐみは続けて言った。