Strange days-5
「だから…自分じゃどうしようも無いからさ。敦に助けてもらえないかと思って…」
沙那はそう言うとうつ向いてしまった。
めぐみは居た堪れなくなった。彼女が唯一、頼ろうとして断られた相手が自分のよく知る人間だったからだ。
「概要は分かったわ。あなたにとっては辛い事よね」
めぐみはそう聞いた後、やや戸惑いながら言葉を続けた。
「敦さんとは…どこで知り合ったの?」
この問いに沙那は笑顔で答える。
「敦とはね。去年のクリスマス・イブに知り合ったの」
「それで?」
めぐみは興味津々に大きく頷いた。
「一緒にご飯とお酒を飲んで…敦の裸も見たわ」
「エエッ!」
めぐみの驚きの声がファミレスのフロアに響く。沙那は吹き出すのを堪えきれずに笑うと、
「お姉さんって分かりやす〜い!敦の裸は見たけど何にも無かったわよ」
めぐみは呆れながら身体から力が抜けるのを感じた。
「あのねぇ…」
何かを言おうとするめぐみを沙那は制すると、
「敦が良いヤツなのは知ってるよ。だから知佳子を助ける術を教えて貰いたかった…」
衝動がめぐみの頭を走った。
「諦めちゃダメよ!私が頼んでみるから。何の約束も出来ないけど…」
沙那はめぐみの顔をしばらく見据えた後、笑顔を見せる。
「じゃあ…お姉さんに任せるよ」
めぐみもその笑顔に応えた。二人は〈お腹空いたね〉と、テーブルの呼び出しボタンを押した。
ー翌朝ー
めぐみはその日、少し早めに出社した。昨夕の沙那との約束を果たすためだ。
乗り込んだエレベーターのドアーが25階で開く。そこは情報システム部が占めているフロアだ。めぐみはシステム管理課の応接室を覗く。そこには昨日同様に敦がソファで眠っていた。
「起きて下さいよ!上条さん」
めぐみは敦の肩を揺らす。
「…うん…」
敦は小さく声をあげるが目を覚まそうとしない。
「もうっ!」
めぐみが呆れた声を出しながらも、大きな声をあげようとした時、
「エヘヘヘヘッ!」
突然、敦は笑い出したかと思うと、流暢な口調で語り出した。