Strange days-20
「オマエにも随分と骨を折らせたな」
助手席に座るめぐみに対し、敦が労った。めぐみは嬉しさいっぱいに答える。
「でも、良かった。あんなに元気になって…」
「まあ、大丈夫だろう。人間、目標を持ったら少々の事じゃへこたれないさ」
敦の言葉にめぐみは大きく頷いた。
メルセデスは大通りを左に折れて、めぐみの自宅へと向かった。
その時だ。
「そう言えば、2人にデートの約束してましたね」
めぐみが敦に不満をぶつけた。が、当の本人は意に介した様子も無く、
「ああ、それが?」
めぐみは意を決して、
「10年後って彼女達25歳ですよね。私…今年で24歳…になるんですけど…ちょうど10年後ぐらいですよね?」
敦は怪訝な表情を浮かべると、
「何が言いたいんだ?」
めぐみは思い切って訊いた。
「昨年のクリスマス。沙那さんとイタリアン・レストランに行ったそうですね」
敦は苦い顔になると、ぶっきらぼうに、
「ああ…それが?」
「それ……今年は行ってくれませんか?私と…」
めぐみはそれだけ言うと、敦のリアクションを待った。
しばしの沈黙。そして、敦がおもむろに答えた。
「じゃあ明日にでも予約を入れておくか。あそこは、ひと月以上前から予約しなけりゃ取れないからな」
敦の言葉にめぐみは喜び、弾む声で、
「ありがとうございます!」
その声に、敦は照れたような顔で、めぐみに言った。
「こちらこそ宜しくな…」
夕闇せまる中、メルセデスは街通りを流れて行った。
それは2人の今後を映し出すようにきらびやかに輝いていた。
…「Strange days 完」…