Strange days-18
「た…武田…ち、知佳子です。……よ…よろしく…お願い…します」
次の瞬間、全員からの拍手が知佳子に送られた。
知佳子は初めて周りを見た。そこには学校で受けていた蔑むような眼で見る者は無く、たくさんの笑顔が彼女に向けられていた。
「良かったわ!知佳子ちゃん」
夕子も彼女の肩を抱いて喜んだ。知佳子は振り向くと、夕子の胸にすがりつき嗚咽を漏らした。
「ちょ、ちょっと!知佳子ちゃん」
溢れる涙を止められ無かった。知佳子は声を挙げて泣き出した。
それは、彼女が以前、流していた人間らしい熱い涙だった。
ー中秋ー
瞬く間に月日は流れて、1ヶ月が過ぎた。
敦とめぐみ、沙那を乗せたメルセデスは、ひと月前に来た道を登って行く。
それは3日前の夜だった。敦のもとへ沢崎から連絡が入ったのだ。
開口一番、沢崎は知佳子の素晴らしさを聞かせた。
「彼女はまったく問題無かったよ。初日に打ち解けてからは、自らが積極的に皆の中に溶け込んでいったんだ」
そして沢崎は、細かいディテールに渡って知佳子の報告を敦に聞かせた。
敦は改めて沢崎に礼を言うと、彼は笑いながら、
「それは夕子に言ってやってよ。ボクはすべて夕子に任せたんだから」
その時、敦は3日後に迎えに行くと言って、今日を迎えたのだ。
メルセデスを宿舎の前に停めると、3人で宿舎のドアーを潜る。
広い玄関の奥から沢崎がにこやかな顔で出迎えた。
「お待ちしてましたよ」
「今日まで、ありがとうございました。沢崎さん」
敦が深々と頭を下げると、めぐみと沙那もつられて頭を下げた。
すると、沢崎は大袈裟に両手を横に振ると、
「とんでもない!ボクの方こそ感謝してるんだ。彼女にはずっと居てもらいたい位さ」
「ところで知佳子は?」
「今、部屋で荷作りを…!アッ、来たよ」
沢崎の声の後、知佳子が玄関の奥から現れた。
「ほう…」
敦が感嘆の声を挙げた。
そこにはあさ黒く日焼けした知佳子が笑顔で立っていた。
「なんか…別人みたい…」
「ホント!?…チカちゃん?」
めぐみと沙那も、声を挙げた。
知佳子は敦達に頭を下げると、嬉しそうに言った。