Strange days-16
ー昼ー
佐藤物産。敦はいつものように、カップ麺とコンビニのおにぎりを自分のデスクで食べていた。
「随分みすぼらしい昼食ですね!」
しらんぷりして食べていると、敦のとなりにめぐみが音を立てて座った。
「無視しないで下さいよ!」
起こった声でめぐみが言うと、敦はノン・シャランな表情で答える。
「オマエと分かったから振り向かねんだよ」
「何ですか!それ。失礼でしょ!」
「で、何だ?皆と食事に出ないでオレにまとわり付く理由は?」
敦がそう言った途端、めぐみは顔を赤らめた。
「あの…これ…」
敦の前に出されたのは可愛らしいハンカチに包まれた、小さな弁当箱だった。
「オマエ…」
「か、勘違いしないで下さいよ…上条さん、いつもまともなモノ食べてないから…」
そう言ってうつ向くめぐみ。敦は笑みを浮かべると、〈いただくよ〉と言ってハンカチを解いた。
ベビー・オムレツにチキン、プチ・トマトに焼きタラコ、チキン・ライスと女の子らしい弁当だった。
敦は〈美味い!〉と連叫しながら貪るように弁当を食べる。
それをめぐみは母親のような優しい眼差しで見つめていた。
食事を終えて敦が、〈今度はオレにオゴらせてくれ〉と言って、缶コーヒーを買ってきた。
2人でコーヒーを飲んでいると、めぐみは急に深刻な顔をして敦に訊いた。
「知佳子ちゃん、大丈夫ですかね?」
「大丈夫って、何が?」
「何が、って上条さんは心配じゃないんですか!」
自分の心配をよそに、敦は意に介さない表情。それがよけいに腹が立っためぐみ。
だが、上条はいつものクールな顔で、
「オレは知らんよ。オレはあの娘が望む、立ち直りのきっかけを与えてやった。後は本人次第だろ」
敦はそう言ってコーヒーを一口飲むと、窓の外を見据えた。
「無理しなくて良いからね」
昼過ぎ。知佳子は夕子に連れられて、ナスの植えられたビニール・ハウスに来ていた。
早朝から昼前に掛けては60人余りの朝食と昼食の用意。
身体を動かす事に馴れていない知佳子にとっては重労働だ。
しかし、夕子が常に知佳子に語りかけ、〈ゆっくりやろうよ〉と気に掛けていた。
「こっちよ…」
バンダナに作業着といういでたちでハウスの中に入る。
「涼しい…」
知佳子の口から漏れる。日光に照らされて蒸し暑いと思っていたからだ。