Strange days-15
ー朝5時ー
けたたましいサイレンの鳴る中、知佳子は目を覚ました。
8畳間に3段ベッドがふたつ並ぶ、6人1組の部屋。知佳子は新しい環境に気持ちが昂ぶって、真夜中に寝ついたばかりだった。だから、起こされても頭の中はボーッとしていた。
「知佳子ちゃん、おはよう」
年齢は20台前半だろうか、この部屋のリーダー格とおぼしき女性から声を掛けられた知佳子は、うつ向いたまま答えた。
「……おはよう…ございます…」
リーダー格らしい女性は知佳子の言葉に頷くと、
「昨日は挨拶しなかったけど、私は平嶋夕子。よろしくね!」
夕子は知佳子に対して、屈託の無い笑顔を向ける。
それを見て少し安心したのか、知佳子もはにかんだ笑顔を向けて、
「…よろしくお願い…します…」
「じゃあ今日は私達の班が食事当番だから、急いで着替えて厨房に行きましょう!」
そう言って夕子は着替え出した。知佳子も同じように着替えるが、動作が遅かった。
何人もの娘が手早く着替えて、部屋を後にする。
焦る知佳子は尚更、動きが遅くなる。それを見た夕子は、
「慌てなくていいわよ。最初から上手くいく人なんていないから」
そう言って親指でドアーの向こうを射して、
「あの娘達だって同じよ。最初は何も出来なかったんだから」
そう言ってまた微笑んだ。
「はい……」
夕子は、着替えた知佳子の肩を抱くと、〈急ごう!〉と言って厨房へと駆けて行った。