Strange days-13
「姉さん!どうしたの?何があったの!」
「兄さんが…兄さんが…自殺…」
敦は先生に事情を説明して自宅へと帰った……
墓碑を見つめる敦。
「一酸化炭素中毒だった……遺書にはオレ達家族への詫びと、自殺に至った経緯が綴られていた」
由貴が敦に続いた。
「元々、優しい人だった……でも、優し過ぎたの。自分が受けていたプレッシャーを私達には見せず、ひとりで背負って…」
由貴はそれだけ言うと、嗚咽を漏らした。
「真面目過ぎたんだ。社会に出て、様々な出来事にアジャスト出来なかった」
敦は墓碑を見据えながら続ける。
「だが、死を持って訴えかけようとするのは卑怯な事だ。
どんなに辛かろうが、生き続ける事の方が尊いのに……」
辺りを朱色の陽光が染めて、冷たい秋風が3人を包んでいた。
ー翌週の日曜ー
めぐみと沙那、知佳子の4人を乗せた借物のメルセデスは緩やかな山間道を走っていた。
墓参りの夜、敦からめぐみに知佳子のための準備が出来たと連絡をもらったのだ。
ただ、その時の条件は、
〈1ヶ月は帰れないから、それなりの準備をするように〉
めぐみはその旨を沙那に伝えれば終わりなのだが、今日を迎えるまでの、沙那や知佳子、ついては知佳子の親の葛藤は容易に想像出来た。
だが、2人共、そんな事おくびにも出さない。沙那はピクニック気分のようにはしゃぎ、知佳子はそれにつられて時折、にこやかに喋っている。
普段なら罵声を浴びせて黙らせようとする敦も、この日はただ黙って運転していた。
メルセデスは山間道を右に折れる。迂回出来ないほど狭く、アスファルトも敷詰めていない道をノロノロと進むと、平屋建ての校舎のような建物が左手に見える。
その先は、山肌を切り開いた地に果樹の木々がびっしりと植えられていた。
「着いたぜ。降りろ」
促されて3人は降りた。そして前を歩く敦に続く。
建物の入口まで来た。かなり古いのか、外壁を補修した後が至る所に見うけられる。
「ちょっと、ここで待っててくれ」
そう言うと、敦は入口を潜り奥へと歩いて行った。
3人はしばらく敦の姿を追っていたが、やがて視線を外に移すと周りを一望して、
「なんか…スゴいトコ来ちゃったね…」
沙那が呆れたような口調で言う。
「確かに、最寄りの街まで随分あるわね」
めぐみが続く。