Strange days-10
「上条だが…」
「…どうしたんです?不機嫌そうな声で」
めぐみからだった。
「ああ…たった今、楽しいひと時をジャマされたからな」
「そんな事より聞いて下さい」
めぐみは敦の不満を無視して続ける。
「さっき沙那さんから連絡があって……知佳子さんが上条さんに頼みたいって」
「それで?」
「自分を変えたいって…」
「わかった。すぐに手配して折り返し連絡する」
敦の返答に気を良くしたのか、めぐみは弾んだ声で、
「頑張って下さいね!上条さん」
携帯の向こうで微笑んでいるめぐみが思い浮かぶ。
「頑張るのは知佳子って娘だろ。じゃあな」
そう言ってめぐみとの通話を切った敦は、すぐに別のところへ電話をかける。
しばらくの沈黙の後、コール音が耳に聞こえてきた。
数コールの後、相手が出た。
「ご無沙汰しております。敦ですが……」
ー翌日曜日ー
昼。敦は自宅から少し離れた駅に出掛けて行った。駅前の駐車場にクルマを預けると、3番ホーム出口付近で人を待っていた。
「誰を待ってるんです」
「ウァッ!」
予期せぬ声に敦はびっくりした。そこにはめぐみが立っていた。
「なんでオマエがここにいるんだよ!」
「友達の家に泊まった帰りなんです…それより、こんなところで誰を待ってるんです?」
「オマエにゃ関係ないよ」
「なんか怪しいなぁ〜!」
敦の素っけない返事から何か感じとったのか、めぐみはわざとおどけた口調を浴びせる。
「だーから、さっさと消えろって…」
めぐみの口調に苛立ったのか、敦にしては珍しく声を荒げた時、女性の声がそれを遮った。
「アツシッ!」
2人が同時に声のした方を見た。30前だろうか、ダーク・グレイのパンツ・スーツに身を包んだ女性が敦に向かって手を振って近寄って来た。
「久しぶりね!ちゃんと食べてる?」
彼女はそう言うと、敦の腕を掴んだ。
「ああ…由貴さんも元気そうだね」
(由貴さんって…寝言で言ってた…)
めぐみは敦のとなりで2人のやりとりを見ながら、あらぬ妄想を描いていた。