冷たい情愛2-3
(もっと…もっと…奥の…その…そこの上…)
社内のトイレで、私は狂っている。
性器が露出するほど大腿を開き、その中心に自分の指を突っ込んでいる。
息は荒くなり、声にならない声が、口角を震わす。
彼の冷たい眼差しは、少しも動きをみせず、私を刺し続けるのだ。
見ないで…でも見て…
貴方を想って発情し、自らの指で性器をまさぐり、それを貴方に見せて狂乱する淫乱すぎる私を。
「あ…もう少し…中を全部犯して…あ…い…いく…」
「あっあああ…」
指先が、奥を的確に捉え刺激を繰り返し、私は達した。
彼の目に刺されたままで…。
性器からは、未だ半透明の液体が流れだし、私はぐったりと息を乱していた。
・・・・・・・
身支度を整え、私は呆然とする。
こんな公の場で、性的衝動を発散するなど10代の時以来だ。
高校生だったころ、校舎の秘密のあの場で…あの男の奴隷だった頃。
大学生になり、恋愛対象となった男達とは皆、ひっそりと愛を育む場でしか性交渉しなくなった。
なのに…
今になって、彼のせいで私は…あの頃の私に戻ったのだろうか。
「おい、設楽。相手先からマニュアルの修正版届いたのか?」
上司の声。
「いや…郵送で頼みましたから…電子媒体でお願いしたほうが良かったですか?」
私は、仕事人の顔に戻り、飄々(ひょうひょう)と答えた。
一時前まで、自分の性器に指を刺し、男の冷たい目を思い出しながら乱れていたくせに…。
「間に合わないだろ。まあ今回は仕方ない。電子媒体で貰ってこっちでプリントアウトしとこう」
的確な上司の判断に私は頷き、パソコンから取引先にメールを送る。
一通のメールが届いていた。
(遠藤さんからだ…)
何故か、怖くなった。
先程までの自分の行為を、見られていたかのように感じたのだ。
メールを開く。