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やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

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ICHIZU…G-12

佳代がセンター・フライに倒れたが、次の青木がライト前ヒットで出塁する。
バッターは山崎と交代した山下が打席に入った。

1球目、外のボール球を見送ると、山下は打席を外して2回素振りをする。
そして打席に入りながら、ベンチの榊が送るサインを見た。

ピッチャーが投げる瞬間、山下はバントの構えをする。
1塁ランナーの青木も、ベースから大きく離れる。

投げたボールは外のストレート。山下はファースト側に転がす。
ファーストがダッシュしてボールを掴むが2塁は間に合わない、絶妙なバントを決めた。

これでツー・アウト、2塁でバッターは菅を迎えた。
元々レギュラーで5番を任されていた菅は、怪我で出遅れ、この試合からメンバーに復帰したのだ。

2塁ランナー青木は、リードをやや大きく取り、ピッチャーにプレッシャーを与える。
ピッチャーは青木に目をやりながら、速いモーションで菅に投げた。

その初球だった。

内角高め。菅の最も好きなコースにきた。菅は腕を畳むようにしてボールを叩いた。
打球はレフトのライン際いっぱいに落ちて、転がっている。
ランナー青木は、ホームまで一気に駆け抜けた。

再びの2点差に沸き上がる青葉中学のベンチ。

菅が2塁を踏もうとした時、レフトがようやくボールを掴んだ。
それを見て菅は2塁に止まらず3塁を目指す。
レフトからショート、ショートからサードへとボールが渡る。
菅は頭から滑り込む。ボールを捕ったサードがタッチする。

一瞬の静寂。

「アウトッ!」

3塁、塁審の手が力強く縦に振られた。

「クソッ!」

好走と暴走は紙一重だが、暴走に終わった菅は悔しがる。

「おしかったですね!」

控えの橋本が菅のファースト・ミットと帽子を持って駆け寄って来た。菅はヘルメットと手袋を脱いで橋本に渡すと、

「もう…1点…欲しかったんだが…」

菅は息を切らしながらそう言うと、ミットと帽子を受け取とり守備へと駆けて行った。

その後、お互いにチャンスに恵まれないまま、最終回を迎えた。

榊は守備を代えて来た。センターに守りの上手い橋本を入れた。

投球練習を終えた青木のもとへ、山下が駆け寄る。

「青木さん。3人で終わらせましょう」

「ああ……」

笑顔で話す山下に対して、青木はどこか固く、笑おうとしているが引きつっていた。


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