reality ability‐第4話‐南の草原、wind grassland‐-6
「はぁ‥はぁ‥。心配ない。」
凰輝はよろめきながらも立ち上がり、羅紅の隣に立つ。
「無理するなよ?」
「ふっ、敵を心配してていいのか?」
羅紅は少し笑い、凰輝はいつもとは少し違った雰囲気で笑う。そして、二人は背中合わせになる。
「おやおや、やはり“カオス様”を裏切りましたね。裏切り者は所詮裏切り者ですね。」
二人を中心に大勢の敵が囲む。闇はその輪から少し離れている所に立つ。
「おっと、そろそろ変装する必要が無くなりましたね。死ぬ前に私の姿を見れるとは運がいいですね。」
そう、雰囲気が違っていただけで他とは容姿は一緒だった。
「ふぅ。あの姿は苦しかったですね。」
そこに現れたのは女顔のような男だった。が、一目では見間違ってしまうだろう。すらりとした手足。細いウエスト。で、その顔。髪も少し長め。
「本当に“カオス様”の直属の右腕なのか?」
羅紅は当然ながら質問する。凰輝は黙って見ているだけだった。まぁ、薫で見慣れているのだろう。
「“力”が全てです。貴方のような者には実力で解らせます。」
自信はあるようだ。しかし、状況が状況なのでよく解らない。
「まぁ、私は手を出す必要はありませんよ。貴方がたにはその者たちに殺られますからね。」
手下たちがジリジリと動き始める。凰輝と羅紅は身構える。確かに数もそうたが強化版の事もある。それにまだ隠された事ありそうだ。
凰輝が少し手負いしているし、羅紅とて庇いながら攻撃が出来ないかもしれない。
「殺れ。」
闇が手で合図する。それと同時に手下は一斉に動き始めた。
「くっ!凰輝!お前だけでも逃げろ!」
「‥‥悪いな。お前を殺さずにセンターサークルに帰るつもりなんでな。」
凰輝はどうしても退くつもりはないらしい。それほど皇希との決意が固いのだ。
「‥‥ふん!知らねぇぞ!」
「ふっ‥」
凰輝と羅紅は同時に各々の目の前にいる手下に突っ込んでいく。二人は笑顔だった。
〈ヒュン!ヒュン!ギィン!ヒュン!ブシュゥ!‥‥〉
流石は十万年前の者たちだ。それなりに優勢ではあった。
「へっ!所詮は雑魚だな!」
「‥‥‥」
次々と倒していく。物凄い速さだ。羅紅は余裕な顔だが、凰輝は考え事があるらしく真剣な顔で黙々と倒していく。
「‥‥‥」
闇は不気味に笑っている。何か裏がありそうだ。