reality ability‐第4話‐南の草原、wind grassland‐-13
「ありがとう。‥‥じゃあ、後で螺樹に会ってちょうだい。そして、力になってあげてね?‥‥あの子は自分を見失っていると思うから。」
織音も母親のようだ。表情からは子に対する優しさや不安がうかがえた。
「解りました。後で会ってきますね。」
凰輝は笑顔で言う。梛も相槌する。その様子に織音は安心の一息を付く。
「本当にありがとう。‥‥今日はこの辺りで帰るわね。‥‥また来ていいかしら?」
織音は立ち上がり、いつの間にか半分になっていた麦茶を飲み干す。
「構いません。今、天界には危機が迫っているようなので‥‥。‥‥この家は織音様からの貰い物でしたね。俺は、‥俺たちは裕福だったんですね。周りの事も考えてはなかった。」
凰輝も立ち上がる。
「俺は少し自己中心的でしたね。‥‥司義莉様や織音様の時代にまた戻してみせます。あの二万年前の時代へ。」
凰輝は真剣な表情、真剣な眼差しで織音に言う。その意志は固く強いようだ。梛も同様のようだ。
「ふふっ、ありがとうね。よかった、頼れる部下たちがいて。」
織音は笑顔で言う。凰輝と梛も笑顔になる。
「じゃあね。こっちに長居すると、知詠神に見つかるからもう行くね。」
織音は玄関へと歩く。凰輝と梛も付いていく。こうして見ると、この三人は強き決意の下で結ばれている。
「‥‥二万年後ぐらいにまた来るわね。」
『はい。』
織音は玄関から出ていく。扉がゆっくり閉まる。
「梛、明日から辛くなるぞ?それでも、自己中心的な俺に付いてくるか?」
凰輝は梛を見る。
「当たり前よ。貴方には私が必要なんだからね?逆に遅れないでよ?」
凰輝が少し笑う。梛は凰輝のその顔で解ったようだ。二人は寝室に戻り、その日は新たなる一歩を踏み出す共に終わった。優しさと希望を持って。
その次の日、凰輝と梛は螺樹と会い、彼は自分を取り戻したようだ。直ぐに階級制度の改革を行うが、知詠神に邪魔され失敗に終わる。
しかし、織音が二、三万年の間隔で帰ってくるので、凰輝は織音に助言を聞き、時が経つにつれ徐々に改善されていった。その際に螺樹は少し“力”による圧力をかけてしまった。
そのせいで、“力”による暴力時代になった。螺樹は自分を責めたが、凰輝と梛に慰められる。その時代の最中、凰輝は羅紅と出会う。二人は意気投合し、直ぐに仲良くなった。
そして、凰輝と梛に子供が出来た。‥‥誠慈だ。その五千年後に織音が帰ってくる。誠慈は織音と親たちの会話を少し聞いていた。その際、織音は本格的に目的の為に帰ってこない事を言う。
夜中、織音が帰り道にしている所に誠慈は立っていた。すると、織音がやってくる。無謀にも挑むが、当然負ける。その時に織音は誠慈の記憶を少し変えていた。大した事じゃないが。
時は経ち、集神城襲撃事件が起きる。凰輝は地界に落とされ、戦い後に梛は泣いていた。次の日、神城家は罪神になる事が決定する。その夜、梛は街中をひたすら歩き回っていた。
とそこに、織音が帰ってくる。音信不通だったはずなのに、罪神になる事を知っていた。織音は【真】の事を言った。そして、現在に至る。