jam! 第3話 『その日、僕の世界が少し変わったこと』-3
「サンキュ!!助かった!」
「大丈夫ですか!?」
「あぁ。……まったく、なんつー無茶苦茶な相手だ。『絶火』程度じゃダメージにもならねぇか。1対1ならもう三回は殺されてるぞ」
「大丈夫です。無茶苦茶さだけなら秋次さんも負けてません!」
「……悠梨、ほめてんのかけなしてんのか良く分からないんだが」
「細かい事は気にしない!ほら、来ます!」
「チッ!」
散開。その場所に一瞬遅れて前足がめり込む。
「真っ正面からいってもまたあの尻尾に弾かれるし……。悠梨、ヤツの動き、少しの間止められるか?」
「はい。……ちょっと準備に時間がかかりますけど」
「このままじゃ埒があかねぇ!悠梨!」
「はい!」
「……『作戦O』だ」
「了解!」
再び散開。二人の姿が消える。
その作戦Oとやらを実行したのだろう。場に黒獣だけが残された。
黒獣はしばらく辺りを伺っていたが、……僕の方に視線を固定した。
訂正。
残されたのは、黒獣と………僕だ。
「に、二階堂さー―ん!?」
情けなく悲鳴など上げてみた。もちろん状況が変わるワケもなく、黒獣がこちらへと迫ってくる!
やっと分かった。
作戦Oの『O』は……
『おとり』のOだ。
「またエサか僕はぁぁッ!?」
神風 利政、本日三回目の囮体験。もうイヤだ。
黒獣が一瞬で迫る、迫り、迫って、
――あぁ、もうダメだ――
そんな言葉が頭の中に響き、目をつむり来たる衝撃に備え、
「悠梨ぃ!今だ!」
「『封陣』ッ!」
目の前が白い光に包まれた。
見ると、黒獣が光の檻のような物で囲まれ、動けなくなっている。
「時間稼ぎご苦労ッ!リショー君!」
その時、頭上に影。
「――っだらあぁぁぁッ!!」
二階堂さんが横のビルの屋上から飛び降りつつ、頭上で大上段に構えた刀を思いっきり黒獣へと振り下ろした。黒獣は尻尾で防ごうとした。
ガギッ!
刀は一度尻尾に食い込んだが、……落下によって十分にスピードが乗った一撃はそれごと斬り払う!
黒獣は斬られた所から血こそ出なかったが、代わりにその部分が消滅していた。